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「文句と言い訳はなくそう」マリノスで“現プレミア智将の通訳”から監督へ…“3年連続昇格”J3クラブ躍進の舞台裏を包み隠さず語る 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byTsutomu Kishimoto

posted2025/09/29 17:00

「文句と言い訳はなくそう」マリノスで“現プレミア智将の通訳”から監督へ…“3年連続昇格”J3クラブ躍進の舞台裏を包み隠さず語る<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto

プロ時代にさしたる実績のない指揮官が、Jリーグの舞台で着実に結果を残している理由とは

「マリノスは当時、守ってカウンターというイメージが強かった。そこを変えるとなると、あれぐらいドラスティックかつ劇的でないとメンタリティは変えられない。アンジェさんもそう考えたのかなと。スタッフのミーティングでも、明言はしなかったけれどもそういうのは出ていました。そこはトップレベルも同じだったと、改めて感じました」

――実際に栃木Cに来て、どんなことを考えましたか。

「前年の映像を見て、もっと攻撃的に行きたいという点、さらにピッチの上では文句とか言い訳はなくそうと一番最初に言いました。サッカー以前にこのマインドを変えない限り運は転がってこないですから」

環境と資金力が監督を後押しする

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――こういうチームにしたいというイメージが自分の中にないとチームは作れない。それが実現できるというある程度の確信があって始めたことですよね。

「まず、大栗社長のもとで、施設を含めて環境が整っているのも決め手の1つとなりました。お金をかけようと思ったときに、実際にかけられるかも大事だと思います。選手がいないと最後は勝てないので、その力(選手を獲れる力)があると思いました(笑)」

――マンチェスター・シティ的な言い方だとプラットフォームとなりますが、シティではプラットフォームがピッチ上の構築より大きな比重がかかる一方で、小さなクラブだとお金も人も限られていて、なかなか難しい。でも監督が望んだことをある程度やってくれる、オーナー社長というのはひとつのメリットだと思います。

「それはあると思います。何段階も踏まなければならない承認をスムーズに進めることができる。もちろん難しさもありますよ。オーナーである以上、その意見は凄く強くなる。ただ、それなりのものをピッチの上で見せられれば、肯定的に受け取られますから」

初年度は昇格ならず…反省と収穫

――関東1部リーグでの1年目は、優勝はしたけれどもJFL昇格はできなかった。どんな手応えと反省を感じていましたか。

「最初の5試合で点が取れず、手こずった(1勝2分け2敗)のが反省点です。リーグが18試合しかないと考えたときに、もっとやるべきことはたくさんあったと思います。またスタッフも含めて全員と『初めまして』だったので、スタッフにも自分がやりたいことを分かってもらわなければいけない。どうすればもっとスピード感を持ってできただろう、とは思いました。

 最終的には昇格できなかったのは力不足でした。ただ結果的に逆転優勝しましたし、自分のためにもなったので、すべてがネガティブというわけではありませんでした」

【次ページ】 選手の理解が早かった理由とは

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