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「ウソついたらすぐバレる」なぜ“地域リーグ勢”が主力のJ3クラブが鹿島と互角の戦いができたか「そこはコンチキショウと」異色の指揮官が語る
posted2025/09/29 17:03
ルヴァン杯鹿島戦、栃木Cのスタメン
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Masashi Hara/Getty Images
今矢直城インタビューの最終回(第3回/第1回からつづく)である。
日本生まれではあるものの、少年時代からオーストラリアで育ちサッカーもプレーし続けたことが、今矢の独自なサッカー観と日本国内でのポジションを形作っているのは間違いない。選手にネガティブな言葉を決してかけない今矢のもとで、ストレスを感じることなくプレーができると選手たちは口を揃える。
今矢は、栃木シティ(以下栃木C)をどこに導こうとしているのか。そして今矢自身の未来は。
「運は日々の行動がつくる」昇格の裏にあった言葉の力
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――2年目(2023年)は何が良くてJFLに昇格できたのですか。
「運はありました。何が運を作るかといえば日々の行動だと思うし、具体的には1年目の最初に指摘したように文句を言わない、言い訳をしない。目の前にあることに100%集中する。自分たちで勝手に決めない、といったことです。
あの年は全国社会人サッカー大会に負けて、Jリーグ100年構想の枠で入れたのですが、負けた後はまさに絶望でした。選手を集めて『ここからの姿勢、ここからのエネルギーを含めて全部が繋がっているから』『負けたのがいいことか悪いことかは勝手に決めるな。もっと大きな流れがあって、全部終わってみないとわからない』と話したのはよく覚えています。ふと出てきた言葉でしたが、我ながら大事なことだったと思います」
――言葉にはすごく気を遣っていますが、選手やスタッフに対して、具体的にどう気をつけていますか。
「言葉や行動が、心を動かすかどうかですね。選手だけでなく、見ているお客さんやサポーターがどんな反応をするか」
――心を動かす言葉とはどんな言葉ですか。
「難しい質問ですね。心を動かす……。本心じゃないと駄目だと思うんです。作った言葉ではなく、正直な言葉でないと。そしてスタッフ、メンバー外を含めた選手がどう感じているのか、相手の立場を考えた上で本心を話すことが、一番心を動かすと思います。そうでないと、どんなにいい話をしても『確かに正論だけど……』という反応になってしまう」
ウソをついたらすぐバレます
――そういうシンプルな言葉でないと響いていかない。言葉の力を持つといわれる人たちと話していて、一番感じることです。

