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三笘薫でも久保建英でも堂安律でもなく…トルシエのW杯日本代表イチオシは“192cmの大器”「課題は3バックだけでなく4、5バックもだ」
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/21 11:02
三笘薫、久保建英、堂安律ら近年の日本代表コアメンバーだけでなく……トルシエが期待を寄せる選手とは
「その役割を果たしているのがグループのコレクティビティだ。グループの力で、ストライカーの不在を補っている。
日本が圧倒的な強さで、W杯アジア予選を突破したことは忘れてはならない。今は国際試合を重ねることで、本大会への準備を進めている。今回はメキシコとアメリカで、来月にはブラジル戦とパラグアイ戦が組まれている。どこも本物のサッカーを実践する国で、簡単ではない試合ばかりだ。だからこそそこから得られる情報は多く、有益でもある。プレスがどこまで通用するか。どこまでのポゼッションが可能で、どれだけ正確に攻撃ができるか。セットプレーのコンビネーションはしっかりと練られているか……。とりわけ守備面の準備は重要だ。あらゆる事態を予測して、準備を進めていかねばならない」
“じつは大事な”ピッチ外の要素とは
――次の大会はアメリカとカナダ、メキシコ開催で完璧なアウェーです。そこがカタールとの大きな違いで、カタールは日本にとって勝手知ったる中東の国というアドバンテージがありました。
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「君は今回の遠征に同行したのか?」
――行ってはいません。私が取材でアメリカを訪れたのは、1998年のCONCACAFゴールドカップが最後です。
「たしかにアメリカは、カタールのようにセキュリティがしっかりしてはいない。移動も宿泊もカタールとは異なる。国内に時差もある。暑さは少し似ているかも知れないが、まったく異なる環境と言っていい。特に安全面はそうだ。
とはいえ日本の選手たちも、今はほとんどが国外で暮らしている。だから環境に関しては、さほど大きな問題にはならないだろう。ヨーロッパで暮らす選手たちにとって、そうした環境への適応は日常的なノルマであるからだ。
適切なホテルを確保し、移動もスムーズにできるようにする。選手たちがストレスなく過ごせる環境を作り出すことこそが重要だ」
4バック、5バックもオプションとして使えるように
――それでは本大会に向けて、日本はどこを改善していくべきでしょうか。
「ラストパスの質をあげて、得点を増やしていくことだ。攻撃をさらに改善して、効率をあげていく。ストライカーの不在を、コレクティブなクオリティをさらに向上させることで補っていく。久保や堂安、三笘、伊東らが、コンビネーションの質を高め、プレーの正確性を向上させる。簡単なことではないが、ラストパスとフィニッシュの質を上げるにはそうするしかない。
またアメリカ戦で試したように、異なるシステムも用意する。3バックや5-4-1だけでなく、4バックもオプションとして使えるようにする。守備を安定させ、どんな相手にもプレスをかけ素早いトランジションを実現できるように準備を進める。そのうえでプレーの強度を高める。強度は重要で、いかなる試合でも保ち続けねばならない」
――本大会で強豪国を打ち破るためには不可欠です。
「プレーの基盤をより確固としたものにする。日本にとってそれは3-4-2-1システムで、森保のアイデンティティでもある。だが4バックも併用できれば、前線で数的優位を作り出すことも容易だ。高い位置からプレスをかけて、ショートカウンターも狙える。そうした考え方のもとに、準備を進めていく。
25~30人のグループがすでに出来あがっている。彼らのすべてにできるだけ多くのプレー機会を与え、戦力として計算できる状態にまで持っていく。それこそがグループの拡大であり、私が考えるこれからの準備だ」
――わかりました。メルシー、フィリップ。〈つづきは第1回〉

