プロ野球PRESSBACK NUMBER
「見切り発車で航空券を買って」MLB最強捕手の自主トレに突撃! “フレーミング伝道師”の情熱「ウーバー配達から日本キャッチャー界の改革者へ」
text by

熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byHiromu Midorikawa
posted2025/09/20 11:05
フレーミング技術を伝える情熱が、緑川さんをメジャー最強キャッチャーのもとにまで導いた(写真:本人提供)
150kmの低めをフレーミングする過酷な練習
動画をまわしながらホセがコーチと一緒に行うメニューを見学して、気になるところは自由に質問し、実際にメニューを体験させてもらう。その中で、とりわけ衝撃を受けたのがキャッチング練習の過酷さだった。
「日本のキャッチャーもマシンのボールを捕る練習をやるんですが、だいたい130kmから140km、それも真ん中付近のボールが多い。でもホセは違って、150km前後のストレートをショートバウンドするくらいの低さに設定するんです」
——それ、危なくないですか?
ADVERTISEMENT
「そう、危ないです。その危ないボールを、ひたすらフレーミングしながら捕る。もちろんスライダーを捕る練習もしていて、140kmくらいのスライダーをフレーミングでしっかり拾う。ぼくも150kmのショートバウンドを受けましたが、フレーミングどころじゃありませんでした。すぐ弾いちゃうんです。ホセは想像以上に、難易度が高いメニューに取り組んでいました」
メジャーの捕球は動きが大きく、速い
トレビーノのキャッチングを間近で見たことで、緑川さんは日米のフレーミング格差の大きさを痛感することになった。
「ミットの動きが大きく、しかも速いんです。フレーミングの予備動作からボールをキャッチして、最後の止めるところまで持って行く。ホセのキャッチングを見たら、こんなに速く大きく動いているんだとびっくりしました。日本のフレーミングより、明らかに動きが速くて大きいんです」
ホセとの自主トレで衝撃を受けた緑川さんは帰国後、アプリを駆使して膨大な数の映像からNPBとメジャーのミットの移動距離とタイムを計測。その結果、メジャーのキャッチャーのミットが、NPB選手のそれよりも速く大きく動いていることが判明した。
このことはメジャーのキャッチャーたちが、より難易度の高いフレーミングを行なっていることを物語る。
ちなみに2023年秋、緑川さんがホークスのキャッチャー陣に初めてフレーミングの講義を行なったとき、メジャーのフレーミングを見た選手たちから「そんなに上手いとは思わない」といった声も上がった。だが翌日の実技になって、彼らはフレーミングに四苦八苦することになった。

