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「見切り発車で航空券を買って」MLB最強捕手の自主トレに突撃! “フレーミング伝道師”の情熱「ウーバー配達から日本キャッチャー界の改革者へ」
text by

熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byHiromu Midorikawa
posted2025/09/20 11:05
フレーミング技術を伝える情熱が、緑川さんをメジャー最強キャッチャーのもとにまで導いた(写真:本人提供)
「みんなミットの端に当てたりして、ボールをぽろぽろこぼしているんです。それもぼくが投げる、なんでもない120km前後のボールを。それで彼らはメジャーリーガーがやっているフレーミングの難しさを実感したようです。
ミットを小さく動かすということは、ボールに合わせて、なかば待つようにして捕るようなもの。これに対してメジャーのキャッチャーたちは、ミットを素早く大きく動かして160km台のストレートや大きく曲がるスイーパーを捕っている。ちょっとでもタイミングがずれるとミットが押されたり、ボールを弾いたりする恐れがある中で、あの速くて大きなフレーミングをやっているんです」
トレビーノのようなキャッチャーを育てたい
ホセは自主トレだけでなく、食事などプライベートの時間も付き合ってくれて、その中で緑川さんは彼がどのような歩みでプラチナグラブに到達したか知ることになった。
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「メジャーリーガーの練習というと効率主義のイメージが強いと思いますが、ホセは正反対で驚異的な練習量をこなしていました。自主トレは朝6時くらいから始めて午後3時くらいまでやる。その中でひたすらマシンのボールを捕り続ける。複数人じゃなくひとりでやるので、大変な数をこなすんです。
2018年にメジャーデビューを果たしたレンジャーズのころから、ある意味効率無視の根性主義でやってきて、いまもそれは変わらないですが、ヤンキースでタナー・スワンソンという世界一のキャッチャーコーチの指導を受けてトップに立った。そんなホセの歩みを知ることで、ぼくならだれかをホセのような素晴らしいキャッチャーに育てることができる、それもより短い時間でと思ったんです」
否定論にも負けずフレーミング伝道を続ける
いまでもフレーミングを「審判をあざむく技術」、「不要なテクニック」だとする関係者、ファンは少なくなく、緑川さんのYouTubeやⅩには否定的な書き込みが絶えない。だが彼は意に介することなく、フレーミング道を突き進む。

