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「WBCでは『ヘタクソ!』と誹謗中傷されて」YouTuberキャッチャーコーチと甲斐拓也“二人の変わり者”の挑戦とは?「日本の捕手は保守的ですから」
posted2025/09/20 11:04
キャッチャー専門コーチでYouTuberの緑川大陸(ひろむ)さん(左)と甲斐拓也。前回WBCで非難の嵐にさらされたという彼らの取り組みとは?(写真:本人提供)
text by

熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Hiromu Midorikawa
それはまだ、緑川大陸さんが福岡ソフトバンクホークスのコーチングに携わる前の2023年3月のこと、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での侍ジャパンの快進撃に沸き返る中で彼は夜も眠れないほど苦しんでいた。自らがフレーミングを教える “生徒” が、誹謗中傷にさらされていたからだ。
その生徒とは今季、福岡ソフトバンクホークスから読売ジャイアンツに移籍した甲斐拓也。緑川さんは甲斐がまだホークスにいたとき、そのチームメイトだった千賀滉大を通じて知り合った。
緑川さんは21年春、千賀の自主トレに参加したことでフレーミングを知り、以来、フレーミングの研究に突き進む。YouTubeを通じて取り組みの成果を発信していたところ、千賀を介して甲斐から「フレーミングについて教えてほしい」というメッセージが届いた。ここからふたりは師弟となり、二人三脚で技術を高めていく。
甲斐拓也のキャッチングに非難の嵐が
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だがふたりが追求してきたフレーミングは、WBCという大舞台で評価されるどころか「ミットを動かしすぎだ」、「構えがおかしい」などとこっぴどく叩かれる羽目になった。
非難の嵐は、WBCの開幕前から始まっていた。
「強化試合の中日戦で佐々木朗希が自己最速タイの165kmを投げたんですが、それを甲斐がたまたま捕り損ねたんです。それがYouTubeにアップされ、“変なことを教わるからヘタクソになった”とか、“ど真ん中のストレートも捕れないのか”といった声でコメント欄が荒れたんです」
WBCが始まってからも、甲斐がYouTubeを開くたびに、そこには“甲斐拓也”、“ミス”、“へたくそ”といったミスを指摘する動画ばかりが並んでいた。憔悴しきった教え子を、緑川はこう言って励ましたという。

