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「見切り発車で航空券を買って」MLB最強捕手の自主トレに突撃! “フレーミング伝道師”の情熱「ウーバー配達から日本キャッチャー界の改革者へ」
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熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byHiromu Midorikawa
posted2025/09/20 11:05
フレーミング技術を伝える情熱が、緑川さんをメジャー最強キャッチャーのもとにまで導いた(写真:本人提供)
「今年、ヤンキースでデビューしたJ・C・エスカラというルーキーがいるんですけど、何歳か知ってます? 今年30歳のルーキーなんです。彼の経歴がおもしろくて、大卒でオリオールズに入団したけどメジャーに上がれず、マイナーでクビになったんです。彼はそこであきらめず、独立リーグでプレーしながらウーバーで食いつないで、ヤンキースでチャンスをつかんだ。ウーバー時代から付き合ってきたパートナーと夢をかなえたんです。その彼の歩みが、ぼくの人生と重なるところがあって」
「素人」の情熱が日本球界を変えつつある
緑川さんは大学を卒業後、アルバイトをしながら役者を目指した。コロナ禍になって収入が激減しても勤め人は性に合わないと思って就活には見向きもせず、ウーバーの配達をしながら野球YouTuberを始めた。その延長線上にフレーミングとの出会いが待っていた。
「ひとり目の子どもが生まれようとしていたので、妻は就職してほしかったと思います。それなのに、ぼくはYouTuberを始めてしまった。ウチはいま3人の子どもがいますが、ひとり目は千賀さん、ふたり目は甲斐さん、3人目はホセと、みんなぼくの人生の転機となる自主トレの前後に生まれました。
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1月の渡米にはすごくお金がかかって、妻は妊婦。しかも幼児ふたりを抱えている。それなのに妻は、行ってきなよと背中を押してくれました。彼女の後押しにも支えられて好きなことを続けてきた結果、いまの自分があるんです」
長く「ミットを動かさないキャッチング」が常識だった日本球界。だがいまNPBにかぎらず、高校球児や子どもたちも大胆にミットを動かし始めている。情熱に駆られて走り始めた素人が、野球の景色を変えようとしているのだ。
〈全3回/はじめから読む〉

