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「本気でやれよ。お前らも、日本代表だろうが」石川祐希らを叱り続けた“鬼のリベロ”「永野さんはとにかく怖かった」男子バレー低迷期の葛藤
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2025/09/22 11:02
2016年、2大会連続でオリンピック出場権を逃したバレーボール男子日本代表。リベロの永野健(手前)は厳しい表情で戦況を見つめる
迎えたリオ五輪世界最終予選。初戦は世界ランキングで上回るベネズエラ。絶対に勝利が必要な試合だったが、日本は第1セットを先取されてしまう。
「自分ではいつも通りに臨んでいるつもりでした。チームもそうだった。でも試合が始まると『おいおい、どうした?』って思うぐらい、みんながみんなおかしくなっていた。声かけても目線が合わないんですよ。だから『オッケー、オッケー。大丈夫だから、行くぞ』と声をかけるしかできなかった。でも内心は思ってましたよ。初戦から負けるのか? いや、負けたら終わりだろって」
永野は当時30歳。4年後の「東京」を見据えたメンバー選考が行われたことで、選手としてピークを迎えていた同世代は陰のポジションに追いやられた。“可能性”と天秤にかけられ選考から落選した仲間の姿も永野の頭に浮かぶ。
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「まだ初戦だぞ。こんなところで、負けるわけにいかないだろ――」
永野はコートの上で必死に声を上げた。そんな姿を、永野以上に唇を噛み締めて見守る選手がいた。控えに回っていたアウトサイドヒッター、米山裕太だ。〈第2回に続く〉

