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「本気でやれよ。お前らも、日本代表だろうが」石川祐希らを叱り続けた“鬼のリベロ”「永野さんはとにかく怖かった」男子バレー低迷期の葛藤
posted2025/09/22 11:02
2016年、2大会連続でオリンピック出場権を逃したバレーボール男子日本代表。リベロの永野健(手前)は厳しい表情で戦況を見つめる
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Sankei Shimbun
かつて「男子バレーは勝てない」と言われ続けた時代があった。あの時、コートにいた男たちはどんな想いで戦っていたのだろう。世界の"頂点"を目指すのが当たり前になった今、4人の証言者の言葉に未来への道筋を重ねる。【NumberWebオリジナル特集・全4回の1回目/第2回に続く】
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現役引退から1年が過ぎ、コーチ生活も板についてきた。
「オッケー、ナイスカバー!」
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会場に響き渡る声の先に、40歳になった永野健がいた。
鬼の形相でボールに食らいつき何度も日本代表に勇気を与えた元リベロが、日本代表Bチームのコーチとして若手選手に活を入れる。指導者になっても鬼なのか、と冗談交じりに尋ねると首を横に振りながら目を細めた。
「全然ですよ。今は“仏”の永野ですから」
“鬼”にならなければ戦えなかった時代――振り返れば、あれから10年あまりの月日が過ぎた。あの頃、永野は必死で向かい風の中に立っていた。
「男子バレーは勝てない」
リオ五輪を前に、日本の男子バレー界は岐路に立たされていた。
ロンドン五輪の出場を逃して迎えた2013年、日本代表は史上初の外国籍監督ゲーリー・サトウを招聘して復権を託した。しかし14大会連続出場中だった世界選手権への切符を逸すると、同年11月のワールドグランドチャンピオンズカップでも5戦5敗の6位に終わった。
2009年から日本代表に名を連ねる永野にとって、当時は見えない光を探して暗闇の中を模索しながら進む日々だった。
「苦しかったですね。勝ち方や戦い方がわからないから、何が正解かもわからない。やってるほうはそりゃあ苦しいししんどいですよ。どれだけやっても結果が出ないわけですから」

