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北海道銀行との契約終了、貯金切り崩し生活…カーリング激闘を制したフォルティウス“苦難の過去”「最後の一投は…」敗れたSC軽井沢クラブが語った「差」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/15 17:08
SC軽井沢クラブを破り、日本代表決定戦を制したフォルティウスの選手たち
両チームの選手が確認する。そして勝負は決した。わずか数cm、中心に近かったのは、フォルティウスの黄色のストーンだった。わずかな差で、フォルティウスが日本代表となった。
SC軽井沢クラブは今年2月の日本選手権では一次予選敗退を喫している。今大会では三浦由唯菜がスポット参加し、セカンドを務めた。三浦に限らず、日本選手権が嘘のように選手たちは好プレーをみせた。上野はこう語っている。
「自分たちのやらなければいけないことを最後まで集中してやりきれました。チームを誇りに思います」
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それでもフォルティウスが上回った。
再び、上野。
「最後の1投は、フォルティウスのこれまでの経験や思いが上回ったものだったと感じました」
今から4年前、同じ稚内でのことをフォルティウスのメンバーは忘れていない。北京五輪出場を目指す日本代表決定戦がフォルティウスとロコ・ソラーレの2チームで行われた。フォルティウスが2勝し代表へ王手をかけながら3連敗を喫し、オリンピックへの道が閉ざされた日を忘れていない。
そこからの4年が今大会に込められていた。
北海道銀行との契約終了…困難だらけの4年間
スタートは簡単ではなかった。
まず4年かけて目指してきた目標が失われて、やすやすと「次を目指す」とはならなかった。
しかも、これからを考えるにあたって大きな出来事があった。メインスポンサーであった北海道銀行との契約終了だ。日本代表決定戦で敗れたすぐあと、北海道銀行から4年後、8年後を見据えて若い世代を育てたいという意向を伝えられ、2021年11月をもって契約が終了することが決まった。併せて、メンバーのうち当時20歳だった伊藤彩未と19歳の田畑百葉は新設する北海道銀行のチームに移ることになった。
チームの基盤自体が揺らぐ中、話し合いを重ねた。4年前は選手として、今はコーチとしてチームに欠かせない存在である船山弓枝はこのように振り返っている。
「2週間くらい、 場所を選ばず、チームで毎日のように話し合い、それぞれの選手の思いをお互いに聞きました」
徹底的に言葉を交わし、思いをぶつけあった。
引退を考える選手もいた。その一方で、「まだやりたい、ミラノに向けてやりたいっていう選手がいたんですよね」(船山)。話し合いを重ねた末に、「4年後を目指す」と皆の心は決まり、スタートを切った。


