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北海道銀行との契約終了、貯金切り崩し生活…カーリング激闘を制したフォルティウス“苦難の過去”「最後の一投は…」敗れたSC軽井沢クラブが語った「差」
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/15 17:08
SC軽井沢クラブを破り、日本代表決定戦を制したフォルティウスの選手たち
「貯金を切り崩しながら生活しました」
苦労は絶えなかった。トップレベルで戦うには長期の海外遠征など多額の資金が必要となるがメインスポンサーを失ったからだ。近江谷杏菜は「7カ月くらいは貯金を切り崩しながら生活しました」と振り返っている。スポンサーを探し求め、2023、2024年と2度クラウドファンディングを実施した。それでも苦労を苦労と周りに感じさせなかったのは、代表を決めたあとの近江谷の言葉が示唆している。
「4年前、敗退した直後は何もなくなってしまったというところから始まりましたけれど、カーリングを続ける選択肢をとったのはただ単純に始めるというのではなく、『世界一を目指す』という覚悟を持ってのことです」
スポンサーを失っても、何よりも大切なものが残っていたから、頑張れた。以前、小野寺佳歩は語っている。
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「ゼロからのスタートでしたけど、チームメイトだけはそろっていました」
予選リーグは初日の2試合ともに敗れて、敗退の瀬戸際に追い込まれながら、そこから残り2試合に勝利し、タイブレークに持ち込んだ。
タイブレークでロコ・ソラーレを破ると決勝の第1戦で敗れ、再び敗退の危機に陥った。何度も跳ね返してきたのは、月並みではあっても、4年間、覚悟をもって真摯に歩んできた時間あればこそだった。
最後のショットを決めた吉村にとっては、実に5度目のオリンピックへの挑戦でもあった。過去何度も代表候補として戦い、跳ね返されてきた。4年だけでなく、その時間も込められていただろう。
五輪に出場できる「最後の2枠」をかけた戦いへ
日本代表にはなったが、大舞台への道はまだ半ばでもある。現在までミラノ・コルティナ五輪への出場権を得ていない日本は、12月の最終予選で獲得する必要があるからだ。参加するのは8チーム、そのうち出場できるのは2チーム、決して容易ではない。そこにフォルティウスが挑むことになる。
「学生のときからオリンピックを目指し続けて、ようやくここでチャンスをつかみとることができましたので、最終予選に向けて準備をして自分たちのベストパフォーマンスを出し切りたいです」(吉村)
道半ばであるのは、道が途絶えなかったからでもある。
4年前の挫折にも心折れず、それをも糧に歩んできたチームは、道の先にある舞台を目指し、進んでいく。

