「朝練は遅刻、門限ルールは守らず、紅白戦も“おふざけムード”…」大学野球で勝てなくなった名門大…「全部変えた。退部者も出た」伝説の名将がやってきた 

　2024年秋のシーズンが終わり、最初の4年生たちが抜けた。そこから香田はさらにアクセルを踏み込んだ。

「最終的には考え方からやり方まで全部、ひっくり返したから」

　練習中の空気感もがらりと変わった。大阪桐蔭出身で、サードを守る3年生の鈴木塁が言う。

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「いちばんの違いは監督が選手の名前を全員、覚えてくれてるってことだと思うんですよ。ベンチ入りメンバーの選手の入れ替わりも激しいので、控え選手同士の紅白戦とかでもピリピリしてる。みんな監督が見てくれているというのがわかるので、モチベーションがぜんぜん違う。前までは主力はほとんど固定で、それ以外の選手の紅白戦なんておふざけみたいな感じでしたから。大学って選手間の温度差がすごいんです。高校生みたいに全員が『甲子園だ！』ってバカになれるもんでもないので。でも香田さんが来てから、みんが同じ方向を見られるようになった。大阪桐蔭の西谷（浩一）監督もそうでしたけど、やっぱり勝てる監督は野球が大好きなんですよ。僕は少なくとも香田監督を日本一の監督にしたいなというのはあります」

「伝わっていないとき、めっちゃイライラしている」

　取材に訪れた日、グラウンドでは試合が行われていた。あまりにも空気が張り詰めているのでよっぽど重要なオープン戦なのかと思いきや、それこそが控えメンバー主体の紅白戦だった。秋のリーグ戦に向け、ベンチ入りをかけた最後のメンバー争いが繰り広げられていたのだ。

　その中心にいたのは香田だ。香田も変わった。いや、戻った気がした。駒大苫小牧時代の香田に。チームを一歩引いた立場から俯瞰するのではなく、選手と同じ目線に立ち、立ち上る覇気でグラウンドを包み込んでいた。

　ヘッドコーチの林が話す。

「僕の中では監督は本質的には何も変わってないですね。高校のときと。日ごと、それを感じます。社会人のときは、遠くから見ていて、変わったなという感じはしましたけど、社会人を相手に同じやり方でできるわけないとも思っていましたし。遠慮してたんでしょうね。最初に駒大に来たときは、完全にコンプライアンスの人になってましたから。言葉遣いとか。そこもだんだんといい感じにフランクになってきたと思います」

　林は東芝時代、都市対抗で優勝も経験している。一流と呼ばれるさまざまな指導者を見てきた中で、香田のいちばん優れているところは「伝える力」だという。

「それができる人って、あんまりいないんですよ。言うだけは言う。うまい言い方をしたりして。でも、それが実際に伝わってるかどうかまでは気にしない。伝えようと思ってしゃべってるのかなって思うんです。でも香田監督は伝えようと思って話すし、伝わるまで言いますから。伝わってないときは、めっちゃイライラしているのがわかります。ミーティング中も、こういうときは、こう動いて欲しいんだ、って。言葉はうまくないんで、長くなったりするんですけど、言葉がうわべだけじゃないんです」

　西部ガス時代、香田に足りなかったものの正体がわかった気がした。

＜続く＞

#4に続く

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