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「朝練は遅刻、門限ルールは守らず、紅白戦も“おふざけムード”…」大学野球で勝てなくなった名門大…「全部変えた。退部者も出た」伝説の名将がやってきた 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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posted2025/09/15 11:00

「朝練は遅刻、門限ルールは守らず、紅白戦も“おふざけムード”…」大学野球で勝てなくなった名門大…「全部変えた。退部者も出た」伝説の名将がやってきた<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2024年1月、駒大野球部の新監督に就任した香田誉士史

 一部の選手は離反したが、香田には心強い理解者がいた。ヘッドコーチの林裕也だ。

 林は2005年に駒大苫小牧が連覇を達成したときにキャプテンを務めていた人物だ。高校卒業後、駒澤大、東芝を経て、2019年1月から駒澤大のコーチを務めている。

 林は母校に戻ってきたときから、曖昧になっていた門限ルールをもっと厳しく遵守させるべきだと前監督に進言していたのだという。

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「ルールの緩さに選手が味をしめてしまっていた。だから、僕はもっと早くやりたかったんです。だって、ルールを守るって、当たり前のことじゃないですか。それくらい徹底できなかったら、何も変わらないと思っていたので。僕はずっとチームを変えたい、強くしたいって、そのストレスをため込んでいた。実際、今回、門限のルールを徹底したことで退部者も出た。でも、僕らがそれくらい覚悟を決めてやったからこそ、残った上級生たちも本気になってくれたし、思った以上に早くチームが変わってきたんだと思います」

ブルペン、食事…「何度も何度も学校と交渉」

 反発していた上級生たちが香田の指導方針を受け入れ始めたのは、入れ替え戦でよもやの敗退を味わってからだった。出村もそんな選手のうちの1人だった。

「もう僕らの世代が勝つ勝たないんじゃないんだなと思いましたね。目先のことでなく、今後の駒大を考えた上での土台作りなんだな、と。5年先、10年先を見据えたとき、今、本当に土台づくりからしっかりやらないと、いつまでも上がったり落ちたりを繰り返してしまう気がして。監督も決して負けてもいいと言っているわけではなく、勝ちたいんだっていう思いはすごく溢れている人なので。そのためには落ちてもいいんだ、と。僕もそれに少しずつ感化されていったという感じでした」

 香田は就任するなり、選手サイドから要望の多かった野球部寮の食事メニューの改善に取り組んだ。また、最近は一塁側のファウルグランドに6人が同時に投げられる屋根付きブルペンをつくった。出村が言う。

「食事のメニューのときも、ブルペンのときも、僕らは監督が何度も何度も学校側と交渉を繰り返しているのを見ているので。そういうのを見ていたら、この人は本気なんだなっていうのもわかってくるじゃないですか」

「紅白戦は“おふざけムード”だった」

 昨秋、東洋大戦で「ありえない負け方」を味わったときも、出村はこう受け止めていた。

「あんな負け方、普通はないんですけど、負けるべくして負けた気はしていました。試合前に4年生が後輩たちに『来年もまた2部でがんばれよ』って、ちょけた(ふざけた)感じで言っていて。主力の4年生たちも、もう気持ちが切れているんだな、と。なので、こう言ったらなんですけど、変わるためにはあそこで負けてよかったんじゃないかなと思います」

【次ページ】 「紅白戦は“おふざけムード”だった」

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