野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭最強世代の中心は変り種。
あらゆる意味でマルチな男・根尾昂。
posted2017/11/17 07:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
松坂大輔のいた横浜高以来となる4大大会制覇の偉業は、最初の大会で潰えた。
今年の春のセンバツ王者にして、ドラフト候補4人以上とも言われるタレント集団大阪桐蔭が、神宮大会の準決勝で姿を消した。
根尾昂、山田健太、柿木蓮、藤原恭大――。
チームが誇る投打の主役たちは、2年生のこの春、1度目の頂点に立った。
彼らのほかにもキャプテンを務める中川卓也、190cmの長身から投げ下ろすボールが魅力の横川凱など、とにかく大阪桐蔭に対する評価は高かった。
「全員が何とかしようという気持ちを持っていたんですけど、結果につながらなかった。力不足なところが多かった。技術と気持ちの問題だと思います」
そう落ち着いた話しぶりで敗戦を振り返ったのは、副主将の根尾だ。
中学時代からすでに146kmを投げる投手として、また、たぐいまれなセンスを誇る打者としても注目を浴びてきた根尾は、タレント集団の中にあっても一目置かれている。
内・外野のどこでも守れて、マウンドにも上がる。
この秋の公式戦では11試合で5本塁打。投手として148kmを計測している。
「強いというより、体の軸がブレないんです」
「ほんま、なんでこんなに打てるんか、よう分からないですよ」
そう語るのは部長の有友茂史だ。
左打者の育成名人がそういうくらいだ。確かに、根尾を見ていていつも不思議に思うのは177cm77kgの決して大きくない身体から、どうしてこれほどの力が生まれるのかということだ。
「ペタジーニみたい、と言いたくなるようなスイングですよね。やっぱり、体幹の力が違うんでしょうね」
有友、そして、指揮をとる西谷浩一監督ら首脳陣の誰もが「人並み外れている」と根尾を絶賛する要素は、彼の体幹だ。従来の野球選手とは一味もふた味も違うこの部分こそが最大の長所なのだ。
西谷監督は言う。
「身体が一切ブレずに体幹を使える。強いというより、体の軸がブレないんです。チームの中でも抜けています」