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「長嶋茂雄さんの志も受け継いで」王貞治が設立した“球心会”とは何なのか「野球界がプロ・アマ大同団結するために、僕が『広報部長』になる」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byMasanori Kise
posted2025/09/16 11:03
王貞治が設立した「球心会」の趣旨とは? 今も衰えない情熱のままに語り尽くした
新たな動きと既存の組織の一致団結をめざして
例えば、プロを頂点として、年齢別のアカデミー、ユース組織を作るとしよう。
高校生を、プロ傘下の「ユース」と、日本高校野球連盟傘下の部活動に分ける。サッカー界ではすでに行われていることだ。社会人を地域リーグに編成し、そこにプロの2軍、3軍や独立リーグのチームも入れてリーグ戦を行う。そういうことができれば、地域振興にも、野球振興にもなる。
高野連や社会人を統括する日本野球連盟など、長い歴史を持つ既存の組織を崩したり、一気に解体するのではなく、新たな組織とも共存できるような方向性を探っていく。つまり、王が説明するように、今ある組織はそのままでいい。ただ、その中に閉じこもらず、大局を見て一致団結しようじゃないか。その“壁”が残るのは仕方なくとも、せめて低くできないか。
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そうした“王の意向”も受け、ソフトバンクは未来を見据え、本格的に動き出している。
ユース組織への取り組みを意識するソフトバンク
2011年から3軍、2023年からは他球団に先駆け、4軍制を稼働させているソフトバンクでGM(ジェネラル・マネジャー)を務める三笠杉彦は「王会長のいろんなプランの話とつながるんですけど、取り組まなくちゃいけないと思っているのはユース」だという。
「4軍って、言ってみれば大人世代の軍を増やしているわけじゃないですか。次、やれるとすれば、ヨーロッパのサッカークラブみたいなユース。サッカーは、昔なら高校サッカーが花形だったんでしょうけど、今はユースからも日本代表が出てきている。そういうことに対して、プロ野球界ももっと取り組まなきゃいけないんじゃないかと、個人的には思っているんです。
地域貢献とか野球振興の観点から言うと、4軍を作って、さらにユース、女子野球。野球人口の減少への対策をするし、我々がやってきたものを地域に還元する。もっとプロで儲けた資産とかノウハウを、アマチュアに還元していかなきゃいけない。
取り組みとしては(ファーム本拠地がある福岡の)筑後をプラットフォームにするのか、はたまた別なのか分からないですけど、ユース世代を組織してやっていく、アマチュアに怒られないようにやっていく、みたいな話を進めていかないといけないのかなとは思っています」
プロとアマ、学生が交流を深め、協力できる仕組みを作ることができれば、野球界はさらに魅力を増すはずだ。そうすれば、野球に取り組む子供たちだって増える。
その好循環を生むための“仕掛け”として、王は新たな構想を披露してくれた。それが何とも『世界の王』らしい、スケールの大きさだった。
「山、貸してもらえないかな」——。
〈「山」発言の真意とは?/3回目につづく〉

