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「85歳、炎天下で自ら指導」「HRを打った“後”を練習」王貞治“世界少年野球大会”31回目への思い「子供たちに野球をやってもらうために」
posted2025/09/16 11:02
31回目を迎えた世界少年野球大会で挨拶する王貞治。野球の普及に向けた思いを聞いた
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Masanori Kise
秋田・大仙市のグラウンドは、来るべき秋の豊かな実りを予感させるような緑の稲が、すっくと、勢いよく天に向かって伸びている水田に囲まれていた。
入道雲が湧き立つ青空とのコントラストは、実に美しい。
日本の夏、まさしく真っ盛り。
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東に奥羽山脈、西に出羽山地が走る盆地だから、とにかく暑い。人工芝のグラウンドゆえだろうか、グラウンド脇に立っていると、地面から足の裏を伝って、体の中に熱が入ってきそうな気がする。
「強烈に暑いくらいでいいんですよ。子供たちは、この暑さと一緒に、ここでのことを覚えてくれるんだから」
炎天下に自ら立つ王会長
王貞治、85歳の夏。
炎天下のグラウンドに自ら立ち、子供たちの輪の中へとどんどん入っていく。
子供たちの方も、何の迷いも遠慮も忖度もなく、王のもとへ近づいて来る。ハイタッチを求め、握手を交わし、取り囲んで質問攻めにする。
「この大会を始めた頃は、聞いてくる子供もほとんどいなかったんだよ。でも、今の子供たちは、どんどん聞いてくるよね」
王は、その触れ合いが嬉しい。だから、子供たちの無邪気な、ストレートなどんな質問にも、真正面から受け止めて、真剣に答える。
例えば、こんな感じだ。
——王さん、どうやったら、ホームランを打てるんですか?
「それはね、走ってね、地面についているところを強くしなきゃいけないんだ。地面についているところはどこだい? 足だろ? 足で打つんだ。打ちたい、打ちたい、ホームランを打ちたい、力いっぱい打つっていうんじゃなく、足を使うんだよ」
ステップして、グリップを振り下ろすジェスチャーを交えながら、下半身の重要性を力説する。それはちょっとばかり、小学生レベルでは難しいのでは、と傍らで見ていて、そう感じたほどだったが、グラウンドに立つと、王の心も体も完全に“野球モード”に変わってしまうようだ。

