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広陵の暴力問題に専門家「やっぱり起こってしまった」3つの原因ズバリ…「強豪校、部員数が多い、そして…」加害行為はなぜ止められなかったのか?

posted2025/09/01 11:01

 
広陵の暴力問題に専門家「やっぱり起こってしまった」3つの原因ズバリ…「強豪校、部員数が多い、そして…」加害行為はなぜ止められなかったのか?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

甲子園で入場行進する広陵の選手たち

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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今年1月の暴力事案に端を発した問題により、今夏の甲子園で出場辞退となった広陵高校。今回の広陵問題、そして高校野球と暴力の関係について、専門家の意見を聞いた。《全3回の初回/第2回へ》 

 夏の甲子園の開幕を前に、今年1月に部内で暴力行為があったことがSNSで広がり、それに端を発し、広陵高校野球部は1回戦勝利後、出場辞退を選択。一連の流れの中で様々な論点があげられ、社会的注目を集める大きな問題となった。

 だが広陵高校に限らず、振り返ってみれば、しばしば高校野球ではいじめや暴力などの問題が起こってきた。広陵高校野球部でなぜ暴行事案が発生したのか。広陵高校に限らず野球部で同種の事案がしばしば起きてきたのはなぜか。解決策はあるのか。

 アマチュア野球における体罰や暴力の歴史を膨大な資料とともにたどり、実証的に考察した著書『体罰と日本野球』があり、この分野の第一人者である高知大学准教授、中村哲也氏を訪ねた。

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◆◆◆

きっかけは“カップ麺”

 沖縄尚学高校野球部の優勝で華やかに幕を閉じた夏の甲子園。一方で広陵高校野球部の出場辞退は大会全体に影を投げかけ、そして風化させるわけにはいかない問題をはらんでいる。

 あらためて、経緯をおさえておきたい。

 今年1月、2年生(当時)の野球部員4人が、部で禁止されているカップ麺を食べた1年生部員1人に対し暴力行為をした。学校は内部調査し高野連へ報告。高野連は今年3月、広陵高校を「厳重注意」とし、加害した生徒たちは公式戦出場停止処分となったが、被害者たる生徒は3月に転校を余儀なくされた。

 7月26日、広陵高校は広島県予選で優勝し甲子園出場を決めたが、1月に起きた野球部の暴力問題に関する情報がSNSに投稿され、その後、拡散していった。「厳重注意」となった事案は規定により原則公表する義務がなく、公表されていなかった。しかしその反響は瞬く間に広がった。

 高野連と広陵高校は暴力事案について公表した上で、そのまま大会に出場し1回戦で勝利。だが、学校は過去にも別の元部員から暴力被害を受けたという訴えがあったことを明らかにし、第三者委員会を設置して調査を進めるとした。そして8月10日、広陵高校は、野球部寮の爆破予告、誹謗中傷などが後を絶たないことを理由として、出場辞退を表明するに至った。

 個々の部分での事実の争いなどはあるが、おおむね上記の通りである。

広陵高の暴力問題に専門家「要因は3つある」

 中村氏はまずこのように語る。

「『体罰と日本野球』の中でも指摘しましたが、体罰や暴力は個人の問題で起きるわけではなく、基本的には日本の野球部や球界を取り巻く構造が発生の要因になっていると考えています。広陵高校もその一つです」

――構造とはどのようなことでしょうか?

【次ページ】 広陵高の暴力問題に専門家「要因は3つある」

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