甲子園の風BACK NUMBER
広陵の暴力問題に専門家「やっぱり起こってしまった」3つの原因ズバリ…「強豪校、部員数が多い、そして…」加害行為はなぜ止められなかったのか?
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/01 11:01
甲子園で入場行進する広陵の選手たち
「部内の秩序を守る」正当化される暴力
――「上下関係」をつくりあげることが部にとって重要で、寮がそれを発揮する場になるのですね。
「そうですね。野球部内の体罰やしごきは、上下関係を作り出し、それをはっきりさせることが一番大きな機能です。監督や上級生が出した指示に部員や下級生が従う、それを繰り返すことで統一のとれた練習ができる、試合のときの指示が通る、だから強くなれるという考えがある。
今回の広陵高校の問題は、“カップ麺を食べてはいけない”という規律を破ったことに始まった。第三者からするとカップ麺を食べようが食べまいが、どちらでもいいと思うようなことですが、寮のルールを破る選手がいると上からの命令通りに選手が動かないということになります。
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要するに中身はなんでもよくて、ルールを守らせることが重要なのです。そして守らせる上級生、守らされる下級生という非対称性があり、『私は殴る人、あなたは殴られる人』という形で上下関係が発揮される。これが基本的には体罰・暴力の大きな特徴であり、閉鎖的な寮という空間でより露わになる。結論として、部内の秩序を守るということを目的にした体罰や暴力は、強豪校で人数が多くて寮があるところでは起きやすいのです。広陵高校だから、ということではなく、構造的な問題です」
広陵高校という個別の案件ではないと断言する中村氏は、さらに歴史に踏み込み、この問題の根深さを指摘する。(続く)
