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広陵の暴力問題に専門家「やっぱり起こってしまった」3つの原因ズバリ…「強豪校、部員数が多い、そして…」加害行為はなぜ止められなかったのか?
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/01 11:01
甲子園で入場行進する広陵の選手たち
「大きな構造的要因というのは三つあります。一つは強豪校であること。もう一つは部員数が多いこと。そして、寮生活をしていること。このような場合に、特に体罰や暴力が起きやすいです。広陵高校は戦前から続く強豪校で、甲子園で何回も優勝している。部員数が164名で今回の夏の甲子園出場校の中で一番多い。部員が全員寮に入っている。まさにあてはまるわけです。やっぱり起こってしまったな、というのが率直な感想です」
164名…なぜ部員数の多さが問題なのか?
――それぞれの要因をひもとくと?
「強豪校は練習の強度が高いですし、監督から指示があればその通りに動く。上からの命令が通じやすい。
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もう一つは、選手同士の競争もレベルが高くて厳しいということですね。部員数が多いと、競争がより過酷になる。広陵のように160人ともなると、レギュラーは約20人に1人ぐらいですよね。レギュラーやベンチ入りを巡る競争は熾烈になるので、上級生にとって下級生は単なる後輩ではなくライバルなわけですね。だから、蹴落とすというようなインセンティブが働く。
また人数が多いと、1人1人の存在が軽視されるという問題もあります。例えば部員9人のチームがあったとすると、1人辞めたら試合ができなくなる。だから部員が少ないチームは、部員1人1人を基本的に大事にする。反対に大所帯では数人いなくなってもあまり関係ない。特に下級生の場合、レギュラーでなければチームの戦力的に影響が少ないですし、上級生からしても存在の重要性があまり感じられないので、殴ったりして辞めさせてもいいし、規律を守れない場合は、過酷な仕打ちをすることになりがちということです」
――「部員が寮に入っている」ことも先ほど指摘されていました。
「寮というのは体罰とかいじめが起きやすい場所を提供するんですね。下級生とか控え選手は上級生とかレギュラーには逆らえない関係性がありますが、日常生活の時間である寮内にも部内の上下関係が持ち込まれ、上級生は安心して体罰や暴力をふるうことができる。寮はそういう場になりがちです」

