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「二流の中の一流を目指そう」 “無名”だった30歳FWはなぜ仙台→磐田→広島…Jで重宝され続けるか「一度、日本代表に入ると実感できるんです」
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byHiroaki Watanabe/Getty Images
posted2025/08/28 06:02
E-1得点王とMVPに輝いたジャーメイン良。30歳にして日本代表で結果を残したFWはJ各クラブで重宝されてきた
「高校時代のコーチも、『お前は上手くないんだから、こうすべきだ』と指導してくれるようなことも多かったんですよね。そこで自分は上手い選手ではないと気づきました。でも、上手くないからといって、点を取れないというわけではないですから!」
ジャーメインは周囲からの期待の声を受けながら、冷静に、毎日を送っている。
「30歳にもなってさすがにヨーロッパとかを目指すような年齢ではないかもしれないですけど……。やはり、一度、代表に入ると、所属チームに帰ってきたときに、試合だけではなくて練習のなかでも『あの刺激を受けて成長できたな』と実感できるような部分があったんですよ。だから、もう一度、ああいう舞台に立ちたいと思うし、そのためにも頑張りたい思いがありますね」
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現在の代表を率いる森保一監督は口を酸っぱくして、こう話している。
「目の前の勝利と、日本代表の未来につながることを考えて決断しています」
その意味で、E-1選手権の全試合で起用されたジャーメインは、日本代表の一員として、あの活動で得たことを日常に繋げる権利と責任を勝ち取ったのだ。それはもちろん、自分のためであるが、そういう意識でプレーすることが、サンフレッチェ広島のチームメイトはもちろん、今はJリーグで戦う誰かの刺激になるかもしれない。
名波コーチも「アルゼンチンだったら通ると思うか?」と
では、E-1の舞台で受けた刺激とは何か。もちろん日の丸を背負って戦う喜びや、ゴールを決めた興奮は大きかった。ただ、それだけではない。
印象に残った出来事の1つとしてジャーメインが挙げたのは、ピッチ外での一場面だった。
「名波(浩)コーチも、ミーティングのなかで映像を見せながら『このパスは相手がアルゼンチン代表だったとき、通ると思うか?』と当たり前のように言ってくれるんですよ」
アルゼンチン代表はご存じの通り、前回カタールW杯のチャンピオンだ。関わる全ての人たちがW杯優勝を目指し、そのために何が必要なのかを考えて戦っている。だから、ジャーメインはあの時間を過ごした選手として、今はこう考えている。
「今の代表はW杯優勝を本当に目指している集団です。そこにいるとき必然的に、自分たちも意識が上がる。練習の一つひとつのプレーから、意識が高まるので。だからこそ、いつ呼ばれても恥ずかしくないようなプレーを日ごろから見せていきたいと考えているんです」〈第1回からつづく〉

