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「二流の中の一流を目指そう」 “無名”だった30歳FWはなぜ仙台→磐田→広島…Jで重宝され続けるか「一度、日本代表に入ると実感できるんです」
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byHiroaki Watanabe/Getty Images
posted2025/08/28 06:02
E-1得点王とMVPに輝いたジャーメイン良。30歳にして日本代表で結果を残したFWはJ各クラブで重宝されてきた
「もちろん、最初は彼の活躍に悔しさも感じていました。ただ、守田がヨーロッパに行ってからは、そういう感情はなくなったというか。やはりヨーロッパでやっている選手は特別というか、別競技とも言いますし……」
守田のような存在や、圧倒的な能力のあるJリーグの先輩たちを目の当たりにしたジャーメインだが、そこで腐るようなことはなかった。そして、2020年を迎え、新たにやってきた木山隆之監督(現ファジアーノ岡山監督)との出会いが状況を変えた。
「監督が代わることって、学生の世界ではほとんどないですけど、プロでは普通にあることじゃないですか。あの時に『じゃあ、どうしたらこの監督に使ってもらえるんだろう?』とすごく考えました」
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即戦力として期待されながら、期待に応えられていないのではないか――そんな歯がゆさがそれまでのジャーメインの頭の中にあった。〈監督はなんで俺様を使ってくれないのだ?〉などとエゴをむき出しにするタイプではなかったが、チームのためになりたいという想いは人一倍強かったのかもしれない。
先発率が一気に跳ね上がった“恩師”の存在
そんななか、木山監督の指導スタイルもジャーメインには追い風になった。
木山監督は各ポジションの選手に対して、細かい仕事や役割を求めていった。プロになってからそういう監督と初めて出会ったジャーメインは、その要求を誰よりも高いレベルで実行することをまずは目指したのだ。
このシーズンは新型コロナウイルスが猛威を振るい、リーグが長く中断するなど不規則な1年だった。そして、プロになってからもっともケガに悩まされたシーズンでもあった。だから、出場試合数自体は仙台時代でもっとも少ない。
しかし、先発率は一気に跳ね上がった。
2018年:29%
2019年:48%
2020年:92%
「ケガばかりではありましたけど、それまでと異なり、初めてレギュラーで試合に出られるようになりましたから」
どうしたら試合に使われるかを必死で考えるようになったのは前述の通りだ。そして、プロで初のレギュラーポジション獲得という成功体験を得た。
「要求されていることをしっかりとできているから、試合に出られているという体験があそこであったんです」
天才的な選手を横目に、重宝される存在に
このシーズンを終えたとき、今度は大学時代の恩師である中野雄二監督の言葉を思い出した。

