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沖縄尚学「エース頼みではいけないと学んだ」日大三「エース以外ももっと起用しても」…甲子園で見えた「エース依存」脱却という新たな景色
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/26 11:04
決勝戦、沖縄尚学の先発投手は背番号10の新垣だった
一方の日大三・三木監督は準々決勝から、先発に近藤を立てることをやめた。
「2試合も完投している近藤をその先も行くと考えた時に、できないことはないなとは思いましたけど、戦えないなと感じました。今の時代とも合わないですしね」
準々決勝から3試合とも先発投手が違ったのには驚いたが、チャレンジしてみれば成果は出るということはこうして証明された。救援に近藤のようなエースが控えるという継投戦術は、いまや多くの強豪私学が採用している。
改めてエース頼みではいけないことを学んだ
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比嘉監督は決勝戦の試合後、複数投手導入についてこう振り返った。
「基本的に自分は、どの試合もエースから起用していくという使い方をしていました。逆にそれが、大会の中盤から終盤の戦いにおいてうちが勝ちきれない戦い方になっているというのは感じていたので、どんどん積極的に新垣を使うということを、沖縄大会のころから意識はしていました。改めてエース頼みではいけないことを学んだ大会でした」
三木監督も言葉に実感を込める。
「これだけ近藤以外の投手がいいピッチングをしてくれるのなら、1回戦から起用しておけば良かったかなと思います。それくらいのピッチングをみんながしてくれた」
おそらく、多くの指揮官やチームは、試すことをしないままに「エースが投げないと勝てない」という決めつけに陥ってしまっているのだろう。
今の時代は公立校や部員の少ないチームでも、多くが複数投手の起用を考えている。当然、疲労による故障のケアも大前提としてあるが、多くの高校が感じているのは、実際に起用していくことで選手が成長し、居場所を見つけていくということである。
複数投手起用の世界へ足を踏み入れると見えてくる新たな景色。沖縄尚学、日大三高が見せた戦いは、いまだに「エース依存」から抜け出せない多くのチームへのメッセージになったはずだ。


