「硬い雰囲気にしたくない」涙の日大三も優勝・沖縄尚学も監督、先輩後輩が“主従・上下関係”に縛られず…広陵問題に揺れた甲子園で見た希望

　あと一歩届かなかった日本一。一塁側アルプスへの挨拶を終えた日大三のナインは泣き崩れた。その選手たちに声をかけた三木有造監督は、真っ直ぐ整列するように促す。外野席へ一礼すると、さらに三塁側とバックネット裏に深々と頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。選手たちを鼓舞する三木監督の姿は、指揮官というよりリーダーだった。

日大三の監督は誰よりもベンチで盛り上げた

　監督の考え方はチームの色として表れる。日大三が見せる「動」のスタイルは、指揮官の特徴と重なる。同点の3回、日大三は2死一塁から、2年生の4番・田中諒が打席に入る。ボールが3球続いた4球目。田中は迷わずフルスイングした。

　結果は中飛となったが、一般的には「待て」のサインを出すケースでも三木監督は甘い球を狙わせる。犠打がセオリーの場面でも、強攻策を選ぶなど積極的に動く采配が目立った。

ベンチで率先して声を出す三木監督　©Hideki Sugiyama

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　ベンチでは、誰よりも大きなジェスチャーや声でチームを盛り上げた。守備の時間は体全体を使って選手に指示を出す。ピンチをしのぐと、ベンチを真っ先に飛び出して戻ってくる選手たちを迎え入れる。そして、攻撃に入る前に秘密の作戦会議をするように選手を座らせて円陣を組む。円陣の最後は大きな拍手で気合いを注入する。

エース近藤には「笑ってプレーしよう」

　試合の流れを引き寄せるためにも、三木監督はアクションを起こす。エースの近藤優樹投手には、「甲子園まで来たんだから、笑ってプレーしよう」と声をかけたという。待っているのではなく、雰囲気を自分たちでつくる意識をチームに浸透させている。

　その言葉に近藤は応える。準決勝の県岐阜商に続き、決勝の沖縄尚学戦もスタンドの観客は圧倒的に相手チームを応援する“完全アウェー”の中、マウンドで笑顔を絶やさない。沖縄尚学のブラスバンドが奏でる曲を口ずさみながら投球した。

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