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沖縄尚学「エース頼みではいけないと学んだ」日大三「エース以外ももっと起用しても」…甲子園で見えた「エース依存」脱却という新たな景色
posted2025/08/26 11:04
決勝戦、沖縄尚学の先発投手は背番号10の新垣だった
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
ようやく新しい景色に足を踏み入れた。
沖縄尚学vs日大三の決勝戦の両先発投手の名前を見て、そんなことを思った。
沖縄尚学が背番号「10」の新垣有絃を先発に立てると、日大三は背番号「18」の谷津輝をマウンドに送った。
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ともにエースではないし、エースが怪我をしたわけでもない。しかし自信を持って決勝戦に送り出した。
沖縄尚学・比嘉公也監督はいう。
「甲子園に来てから新垣の状態がすごく良かったので、準決勝は末吉(良丞)、決勝は新垣が先発と、キャッチャーの宜野座(恵夢)にはだいぶ前から伝えていました」
日大三・三木有造監督もいう。
「谷津はコントロールがいいピッチャーなので、なんとかランナーを出しながらも3回くらいまで行ってくれるかなという気持ちで送り出しました」
「依存型」だった両チームの変貌
時代が変わったというより、指揮官が変わった。
というのも、数多の甲子園出場校や指揮官の中で、沖縄尚学や日大三はこれまで「依存型」に分類されるチームだったからである。
依存型とは「エース依存」のことである。
2020年に球数制限が導入される前後から、高校野球における投手起用は一つの転機を迎えた。甲子園のみならず地方大会でも複数投手を起用する高校が増え、時代の地殻変動は起こっていたのだった。
しかし、それが全ての高校に該当するかというとそうではなかった。
今大会の出場校でいうと、仙台育英や健大高崎は早くに複数投手体制を採用できたチームだった。しかし、伝統のある学校や、勝敗に対して厳しい目を向けられる学校においては、なかなか複数投手体制に踏み切れないというチームもいくつかあったのだ。
複数投手体制に踏み切るためには、たくさんの背景が必要だ。

