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沖縄尚学「エース頼みではいけないと学んだ」日大三「エース以外ももっと起用しても」…甲子園で見えた「エース依存」脱却という新たな景色
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/26 11:04
決勝戦、沖縄尚学の先発投手は背番号10の新垣だった
もっとも、強豪私学にできるからといって、みんなができるわけではない。選手層も関係してくるし、地方大会のシステム上の問題もある。夏の大会が比較的ゆったりとしたスケジュールで組める地域は多くの投手を育成する必要性がなく、結果、「エース依存」に繋がりやすいという事情もある。これまでは、たとえば秋田県や徳島県にはそうした傾向が出やすかったといえるだろう。
その中で沖縄尚学と日大三は「エース依存」から抜けきれないチームだった。実は、両校はともに、準々決勝まではエースを主に起用している。沖縄尚学は1回戦と3回戦でエースの末吉良丞が完投。2回戦でも4イニングの救援がある。3回戦は延長タイブレークにもつれたこともあって、169球完投という依存ぶりだ。日大三もエースの近藤優樹が2、3回戦で先発完投。今年もこのままいくのか、と想像できた。
大会途中で変わった起用法
ところが、勝ち進んできた両校が、準々決勝からエースの扱いを変えた。沖縄尚学は準々決勝で新垣を先発させ、準決勝では末吉の後を継いで救援でも起用している。
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準々決勝を終えた際、エースがマウンドに立つと交代させにくいのではないか、と比嘉監督に尋ねると、末吉の疲労との兼ね合いについてこう答えた。
「末吉はマウンドにいると代えにくくはなりますけど、球数で縛ってそこを代えどきにしようかなと思います」
正直、この話を聞いた時には、そこまでの決意は感じなかった。過去の試合からも、末吉が投げていれば、敗北の危機を感じる失点をするまでは続投させるのではないかと見ていた。しかし実際に、準決勝の6回途中で末吉の球数が120球近くになったために、この夏初めて新垣をリリーフ投入したのには驚いた。
そして、新垣はそこで好投を見せて、決勝にもつなげたのだった。

