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沖縄尚学「エース頼みではいけないと学んだ」日大三「エース以外ももっと起用しても」…甲子園で見えた「エース依存」脱却という新たな景色
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/26 11:04
決勝戦、沖縄尚学の先発投手は背番号10の新垣だった
それはたとえば多くの部員が入部できる環境であり、その部員を長い目で見て育成する余裕があるほどの戦力の充実だ。仙台育英はそれに該当するだろう。
一方の健大高崎はエース依存がなかったわけではなく、そもそもは偏った起用も多かったが、ある時を境に複数投手体制に踏み切っていくと、勝利もついてきた。
専門家の指摘があれば投げさせない
健大高崎の青柳博文監督は、複数投手への移行当初の話をこう語る。
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「2012年のセンバツで、うちはベスト4に入ったのですが、その際、エースだった三木(敬太)を一人で投げさせたんです。すると、その後、故障して夏に投げられないということがありました。
(それから)選手の健康状態に関して、理学療法士をチームに呼んでケアをしてもらっています。僕では分からないので、投げすぎた場合などは、専門家の意見を聞くようにしています。理学療法士さんから指摘があれば、選手が『大丈夫』だといっても、その言葉は信用しません」
専門家から投げてはいけないと判断された投手は、起用しない。つまり、たくさんの投手を抱えないことには勝つことはできない。そうして、複数投手体制に踏み切った青柳監督は「エース依存」から遠い存在となったのだ。
仙台育英や健大高崎、あるいは花巻東といった強豪は、複数の投手を起用することに迷いがない。チームメイトのスーパースターが甲子園の好投と引き換えにその後の野球人生を棒に振った、という経験を持つ智弁和歌山の中谷仁監督も、今は母校で複数投手起用に踏み切れている。

