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「お買い得48億円でサラー獲得」「売却益150億円超を最強DF・GKに再投資」“ボロ儲け”リバプール補強戦略ウラ側…日本遠征で衝撃の16歳怪童も 

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ジェームズ・ティペット

ジェームズ・ティペットJames Tippett

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2025/08/03 17:02

「お買い得48億円でサラー獲得」「売却益150億円超を最強DF・GKに再投資」“ボロ儲け”リバプール補強戦略ウラ側…日本遠征で衝撃の16歳怪童も<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

世界最強FWのサラー。彼を“お買い得な移籍金”で獲得したリバプールの補強戦略とは

 監督就任2シーズン目以降の6シーズンはいずれもプレミアリーグで4位以内に入り、2020年にはクラブ史上初めてプレミアリーグタイトルを制覇。2018年から2022年までの5年間で3度チャンピオンズリーグの決勝に進出し、2019年にはビッグイヤーも手にしている。特に2019年3月10日から2020年2月24日にかけては、リーグ戦36試合を戦い35勝1分と無敗を維持する。

 36試合に限定すれば、プレミアリーグ史上最高の勝ち点106を積み上げた(2018/19、2019/20シーズン。理論上の最高勝ち点は108)。信じられないような記録が樹立された背景には、明らかに運も作用している。だが以前に比べて、チームのパフォーマンスは劇的に変わっていた。しかもリバプールは、グラハムやエドワーズなどを活用しながら、ライバルチームよりもはるかに少ない予算でこれを成し遂げた。

世界中の10万人以上の選手を追跡

 例えばグラハムが担っていたのは、試合前に対戦相手の分析データを準備する作業と、選手補強をサポートすることだった。グラハムは独自のデータベースを構築し、世界中の10万人以上の選手を追跡。これを指針とすべく、クラブ内では補強の決定権が監督、スカウトチーム、リサーチ部門のメンバーから構成される移籍委員会に委ねられた。

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 つまり、監督1人が自分の知識に基づいて判断するというサッカー界の伝統的なやり方に頼るのではなく、共有された情報を参考に決断を下すようになったのである。

(※追記:2025年7月30日、日本で開催された親善試合でゴールを決め、圧倒的なスピードで衝撃的な突破を見せた16歳の怪童リオ・ングモハもそのネットワーク内にいる1人と言える)

サラー48億円獲得は“フィルミーノとセット”だった

 2017年、グラハムの分析モデルは、ASローマに在籍していたモハメド・サラーを獲得候補としてリストアップする。

 ただしサラーがイングランドで残していた記録は、物足りないものだった。

 チェルシーでの2シーズンでは13試合に出場し2ゴールを挙げただけで、むしろローン契約で貸し出され、他クラブでプレーする時間の方が多かった。だがデータによれば、サラーはリバプールですでに活躍し始めていたロベルト・フィルミーノと相性が良いはずだった。フィルミーノが生み出すxGは、同ポジションのほとんどの選手を上回っており、一緒に組むことで得点を量産することが期待できた。

 当初、クロップはサラーではなく、ブンデスリーガで勢いに乗っていた若手のユリアン・ブラントを獲得しようとしていた。ところが最終的に4200万ユーロ(※当時のレートで約48億円)の移籍金を支払って招かれたのはサラーだった。

【次ページ】 “150億円超”売却益をファンダイクらに再投資

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