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角界復帰の可能性は「全然、ありますね」…大の里を破って相撲世界一→アメフト転向でNFL挑戦 23歳元“天才力士”の未来図「いろんなオプションがある」
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別府響Hibiki Beppu
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/07/14 11:02
日本人初のNFL選手を目指す元アマ横綱の花田秀虎。来年のトライアウトで挑戦が成就しなければ様々な未来図も描いているという
とはいえ「まだ」24歳でもある。
――もし、アメフトを辞めたら相撲界に戻る可能性も?
そんなことを聞くと、本人はあっけらかんと「その可能性も全然、ありますね」と答えた。
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「ただ、僕の中にもいろんなオプションがあって。その中のひとつという感じですかね。他にも、例えばいまアメリカのプロレス団体WWEにもスポンサードをしてもらっているので、そっちの道もありますし。ただ、身体が動くうちはプレイヤーとして何かスポーツをやりたいな……とは思っています」
もともとアマチュア相撲の頂点を極めながら、まったく別の世界に飛び込んだ“変わり者”だ。今後の未来もまた、周囲からは想像もできない方向に進んでいくのだろう。
◆◆◆
花田が言い淀んだ「先輩との一番」の内容
ただ、もし角界に戻ってくるならば、これほど風変わりな経歴の力士にファンが興味を抱かないはずがない。そして、そんな男が旋風でも巻き起こそうものなら――新横綱との因縁も相まって、それこそ大きな注目を集めるはずだ。
そしてきっと花田は、その自分の価値に気付いている。
そんなことを感じたのは、花田にとって力士最後の花道になった、大の里を破って世界一に輝いた2022年のワールドゲームズ決勝に話が及んだ時だ。
この試合、花田は立ち合いで「徳俵に足がかかるほど」距離を取ったのだという。
大相撲でも奇襲として小兵力士がごく稀に行うこともあるが、それ以外にはほとんど見ることがない戦法だ。ましてや優勝候補の大本命だった花田が、なぜこんな戦法をとったのだろう。
そんな率直な疑問をぶつけると、花田は少し困ったような顔でこう答えた。
「それは――秘密ってことじゃダメですかね。もう昔のことですし、終わった取り組みですから」
それまでどんな質問にもよどみなく答えてくれた花田の逡巡に、少し驚いた。
それは、言葉通り「終わった取組」だったからなのだろうか。それとも横綱になった先輩の現状を考えれば、かつての勝利を誇ることなど、「おこがましい」と思ったのだろうか。
ただ、いち相撲ファンとしてこの答えを聞くならば、もうひとつの可能性であってほしいと思わずにはいられなかった。
それはきっと――いつか再び「横綱」を倒すときの“秘策”なのだと。


