大相撲PRESSBACK NUMBER
角界復帰の可能性は「全然、ありますね」…大の里を破って相撲世界一→アメフト転向でNFL挑戦 23歳元“天才力士”の未来図「いろんなオプションがある」
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/07/14 11:02
日本人初のNFL選手を目指す元アマ横綱の花田秀虎。来年のトライアウトで挑戦が成就しなければ様々な未来図も描いているという
比例するように、アメフトの面でも日々の練習で結果を出し続けると、目に見えてチームメイトやコーチの態度が変わってきた。少しずつ信頼を勝ち取っていくと、入部から2カ月後の10月にはNCAA1部の公式戦にも出場。3タックルを決めるなど、確かな足跡も残して見せた。
その一方で、実際に試合に出始めてNFLに進むような選手とマッチアップをしてみると、アメリカにおけるアメフトという競技の層の厚さに衝撃を受けた。
「まず、骨格が違うんですよね。骨が太いというか……体重では僕より全然、軽いはずなのに、めちゃくちゃデカい。僕はかなり頑張って体を大きくしたタイプなんですが、彼らはもう生まれたときからデカいんです。それは人種的な要素が大きいので、どうしようもない部分でもあるんですが」
ADVERTISEMENT
また、黒人選手の運動能力やフィジカルにも驚かされたという。
「本当にグミが主食みたいな選手でも、身体がバッキバキなんですよ(笑)。あれは努力でどうこうなる世界ではない。同じポイントで勝負したらいけないんだな……というのは感じました」
アメリカには「大の里がゴロゴロいた」
中でもドラフトで上位指名されるような選手たちは、やはり別格の強さを感じた。相撲とアメフト、2つの世界の頂点を肌で感じたことのある花田にしか言えない言葉で、その壁の高さを表現してくれた。
「ぶっちゃけ……大の里がゴロゴロいました」
アメリカにおけるアメフトの人気は唯一無二だ。アスリートもそれこそ他の競技とはケタ違いの素材がやってくる。その中でもプロに進むような選手であれば、確かに横綱級のポテンシャルを持っているものなのだろう。
ただ、そんな怪物たちを相手にしながらも「正面切っての一発勝負なら、誰が相手でもほとんど負けない」というところまで成長をみせた。「アメフトは正面のパワーだけじゃないんで、難しいですね」と言いながらも、そこに花田の非凡さがうかがえる。
結局2023年シーズンは、その後も少しずつだが公式戦に出場。
12月にはその活躍もあってスチューデントアスリートとしてのスカラシップを受けられることも決まった。学業面での資金の心配をしなくてよくなると同時に「自分の頑張りが認められた」ということも花田にとっては大きかった。
ここまでは順風満帆と言って良かった。だが、ここから花田の挑戦が暗転する。

