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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「長嶋は“配球を読まずに”3割打った」のウソ…長嶋茂雄“じつは黒柳徹子に明かしていた”本音「何も考えずに打っていた」説の真相
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2025/06/14 06:01
1974年10月、引退発表の記者会見をする長嶋茂雄。左は川上哲治監督
黒柳:バッターボックスにお立ちになった時は、無心の感じでいらっしゃいました?
長嶋:無心……無心というのが、どういうことかね……無心でも幅と奥行きがありますから。
「無心=何も考えていない」ではない。そもそも「無心」とは「邪念がない」という意味である。長嶋は続けた。
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長嶋:テクニックはある程度、限度がありますよね。ですから、テクニックよりも、バランスっていうんですかね。全体の調和、そのバランス取る方の意識を強く持ったタイプなんじゃないでしょうかね。選手によってテクニック優先、つまり技術、技術、技術で行くタイプと、あるいは技術よりも総合バランス、あるいは技術よりも気力で行く。ハードな精神力でいく。いろんなタイプがいますけども。
黒柳:じゃあ、総合バランスってことをいつも考えてる?
長嶋:僕はいつもバランス考えてます、ハイ。
黒柳徹子に語っていた…
「総合バランス」には技術や精神面に加え、配球予測も入っていたのだろう。打席内での“無心”や“計算”について聞かれると、こう答えた。
黒柳:ものすごく計算していらっしゃるのかと思ったら、実はとっても計算なさらないでね、「無心であそこに立っていらっしゃるんだ」って思ってる人も随分いるとは思うんですけど。
長嶋:部分的な計算はよくやってますよ。部分的な計算は必要なんですが、それだけで勝負を挑んでもね、確率の高いものは……ないんですよ。ですから、マシンの世界ならば、1+1は2になる可能性ありますけども、野球、サッカー、全ての球技を見ましてもね、1+1は5にも10にもなる。逆にまたね、ミスを犯せば1+1はね、マイナス5にも10にもなる。そういう怖さがあるでしょ。ですから、バランスを取るっていうのは、簡単なようで非常に難しい面もあります。ええ。(以上、2003年1月6日放送『徹子の部屋』テレビ朝日系)
データ通りになるなら、対戦する必要がない。しかし、勝負は何が起こるかわからない。長嶋は相手の傾向を頭に入れながら、その日の投手の調子、自分の状態を考え、データにアレンジを加え、配球を読んでいたのではないか。その上で、邪念を捨てたのだ。そうでなければ、右打者最多の首位打者6回、歴代1位の最多安打10回という記録は残せなかっただろう。
人を“天才”の一言で片付けてはならない――。
※テレビでの発言はできる限り、そのまま再現しているが、読みやすさのために省略している部分もある

