杉内俊哉へ「必要としてくれる球団はない」発言は本当にあった？…ソフトバンク元フロントが振り返る“ホークス→巨人”衝撃の移籍の舞台ウラ 

ソフトバンクの「代名詞」三軍制の意義

――実戦の機会を少しでも増やすことが重要だった……と。

小林　そうです。実際にこうした考え方は先進的な取り組みを行っているMLBではすでに常識となっています。MLBの球団は300人以上の選手を抱え、AAAからドミニカのアカデミーまで、少なくとも6軍に相当する育成の枠組みを持っています。それだけ「実戦を通じて育てる」という意識が浸透しているわけです。

　そうした環境の中で、甲斐選手や千賀選手が自らの力で這い上がり、いまや球界を代表する存在になってくれたことは、まさに三軍制がもたらした象徴的な成果だと思っています。いまでも彼らがテレビでプレーしている姿を見るたびに、胸が熱くなります。

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――小林さんが周囲からの反発にも屈せずにチームを改革できた原動力とは、どのようなものだったんでしょうか。

小林　部下にも恵まれましたが、やはり、王（貞治）会長と孫オーナーの存在が大きかったと思います。王会長は現役時代、巨人の「V9」を主力として支えたばかりでなく、監督としても巨人とソフトバンクで通算19年間指揮を執った方です。勝ち続けることの難しさと意義を、理屈ではなく実体験として誰よりよく分かっていました。

「常勝軍団をつくるには、チームに常に刺激を与え続けることが不可欠だ」——これは、私がチームづくりにあたって強く意識していた言葉ですが、まさに王会長からの言葉です。また「君のやりたいようにやれ」「俺をうまく使え」とも言っていただきました。あれだけの実績と重みを持つ方が、私のような若輩にも信頼を寄せてくださったことには、今でも感謝の気持ちしかありません。

　また、当時の球団社長であった笠井和彦さん（故人）にも、全面的にご支援をいただきました。笠井さんは、私の判断を一貫して尊重し、常に力強く後押ししてくださいました。現場やフロントのスタッフ、編成部門や育成部門を支えてくれた多くの同僚たちにも、本当に助けられました。私一人では到底やりきれなかった数々の改革も、そうした仲間たちの理解と献身があってこそ、実行に移すことができたのだと思います。