杉内俊哉へ「必要としてくれる球団はない」発言は本当にあった？…ソフトバンク元フロントが振り返る“ホークス→巨人”衝撃の移籍の舞台ウラ 

――フロントとして逆風が吹いても、改革を推し進めなければならなかった、と。

小林　そうですね。特にベテラン選手ともなれば、長年にわたってチームに貢献してきたという自負があるのは当然のことで、それはとても大切なプライドですし、尊重すべきものです。ただ一方で、フロントの立場から見ていると、どうしても現状への「安心感」や「慣れ」が生まれてしまう場面も感じられるのです。影響力のある選手であれば、たとえ成績が少し落ちていても、チーム内外の期待感や存在感から出場が続くケースもあります。

　そしていざスタメンを外したり、調整のために二軍でプレーしてもらうような判断をすれば、本人にも周囲にも戸惑いや不満が生まれる。そうした状況をそのままにしておくと、若手選手に十分なチャンスが巡ってこないという課題も出てきます。だからこそ、適切な補強や人事を通じて、チームに良い意味での「刺激」を与え、競争環境を保ちたいという思いがありました。すべてはチームの未来を見据えたうえでの判断だったと今でも思っています。

杉内へ「必要としてくれる球団はない」発言の真偽

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――この「非情な決断」で話題となったのが、11年にFA宣言をした杉内俊哉選手でした。

小林　当時は「小林は人をモノ扱いしている」などと言われてしまって……胸が痛みました。

――当時の報道だと、小林さんが杉内選手に対して「FA権を取得したからといって、必要としてくれる球団はない」と言ったとされていますが、実際はどうだったんでしょうか。

小林　私が杉内選手にそのようなことを申し上げた事実はありません。というのも当時、杉内選手とは直接交渉する機会はなく、交渉は一貫して代理人を通じて行われていましたから。また、私自身が代理人との交渉を直接担当したのは、前年の2010年オフの契約更改までで、2011年にFA宣言をされた年の交渉には関わっていませんでした。2010年オフの交渉の際には、翌年にFAを控えていることを見据えて、できる限りの誠意をもって対応したつもりでした。

　もちろん青天井というわけではありませんが「私たちが最も高く評価している」というメッセージは、代理人の方にはしっかりとお伝えしたつもりです。ただ、そのやり取りの過程で、言葉のニュアンスや意図がどこかで違った形で伝わってしまい「他球団には評価されていない」といった内容になって、杉内選手の耳に届いてしまったのかもしれません。それが結果的に本人の感情を刺激する結果となったのではないかと考えています。

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