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藤井聡太は21歳で永世資格を獲得したが「大山康晴戦から12日後…山田道美、36歳の死」「羽生善治“七冠”が崩れた日」棋聖戦の死闘史
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/31 11:01

「私の将棋は論理的ではありません。独創性を重視しています。棋士になって学んだ最大の教訓は、どんな状況でもあきらめないことです。棋聖のタイトルは最も愛着があり、開幕前はいつも某所にお参りに行きます」
現代の佐藤将棋は剛腕で知られるが、20年前からその兆候があったようだ。
〈第89期:18年度〉
羽生棋聖に豊島将之八段(28)が挑戦した。羽生が防衛すれば、獲得タイトルは大台の100期に達する。しかし第5局で敗れて持ち越しとなり、8タイトルを8人の棋士で持ち合う戦国時代に突入した。一方の豊島は5回目の挑戦で初タイトルの棋聖を獲得した。
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「20歳での初挑戦から8年かかりましたが、あきらめずにやってきて良かったです。今年は王将戦の挑戦失敗とA級プレーオフ敗退がありましたが、心が折れずにモチベーションを持ち続けられました」
豊島はこう喜びを語った。
「探求心を持って」から5連覇…永世資格を得た藤井
〈第91期:20年度〉
渡辺明棋聖(36)に藤井聡太七段(17)が挑戦した。当時はコロナ禍の影響で緊急事態宣言が発令され、棋士は100キロ以上の移動が禁止となった。愛知県在住の藤井は東京・大阪への対局場に行けず、2ヵ月ほど自宅で待機した。
しかし、それが良い充電期間となった。5月末に解除されると、1週間の間に準決勝、決勝に勝ってタイトル戦に初挑戦した。藤井は第1局で渡辺の16連続王手をかわして先勝。第2局で自陣に打った△3一銀は、「AI超え」の受けの好手として話題になった。
そして藤井は7月に渡辺を3勝1敗で破り、初タイトルの棋聖を獲得した。17歳11カ月のタイトル獲得は最年少記録となった。藤井は記念色紙に《探求》と揮毫し、こう語った。
「今後も探求心を持って盤上に向かいたい」
2025年5月31日の名人戦第5局を制し、同タイトル3連覇を果たした藤井は昨年、21歳11カ月で棋聖戦5連覇で永世棋聖の称号を取得した。今年はヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負で杉本和陽六段(33)の挑戦を受け、第1局は6月3日に行われる。優勝賞金は4000万円に増額(ほかに特別賞が1000万円)されるなど、棋聖戦はいろいろな意味で注目を集めている。〈第1回からつづく〉

