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「敗着でしたね」永瀬拓矢33歳、藤井聡太23歳に敗れた王将戦“大長考2時間54分”の真相…決着前は「秘密でいいですか」とした準備も明かす
posted2026/04/12 06:01
永瀬拓矢九段と藤井聡太王将。決着局となった王将戦第7局で、永瀬が2時間54分の大長考に入った真相とは
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Shintaro Okawa
コンセプトは、先手風後手。それがすべてです
藤井聡太王将が5連覇を果たしたALSOK杯第75期王将戦。七番勝負が決着した夜、東京に帰る新幹線の中で、挑戦者の永瀬拓矢九段に取材をした。
角換わりになり、後手の永瀬から仕掛けていった。その作戦の意図について尋ねた時のことである。
「コンセプトは、先手風後手。それがすべてです」
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そう言って永瀬はニヤリと笑った。わかります? と問いかけるような顔つきだった。
さっぱりわからない。お手上げになった私は、「もう少し補足していただけませんか?」とお願いをした。
「後手から動くけれど、先手のような形をしているんです。動いた後は、角換わりによく現れる形が出てくる場合が多い。その時、先手の9筋の位がどうなっているかを含めて、類型と比較します。どちらがいい形を作れるかどうかの探り合いですね。2人とも角換わりの経験が豊富なので、このカードならではの駆け引きと言えます」
前例から微妙にずらした先手っぽい形で仕掛け、ありそうでなさそうな判別しにくい局面に持ち込み、自分だけいい形を作って作戦勝ちを狙うということか。いずれにせよ、永瀬と藤井の間で超高度な駆け引きが展開されていたことだけはわかった。果たしてこれは他の棋士も理解できるのだろうか。
「うーん、伊藤さん(伊藤匠二冠)ぐらいかもしれませんね」と永瀬は言う。
2時間54分大長考のナゼ
後手から戦端を開いたが、4四に歩を突いていったん落ち着いた。藤井はすぐに4筋の歩を突っ掛け、永瀬は4六の地点に角を打った。再び激しい展開になったが、局面はさらに動く。お返しとばかりに藤井も6六に角を打つと、永瀬はノータイムで4五の歩を取った。先手は4八の金を真っすぐ立って角に当てる。
これで後手の角の行き場が難しくなった。

