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「将棋の内容が良くない」名人・藤井聡太23歳は話したが…“不調説”一掃のタイトル戦6連勝、糸谷哲郎37歳の「斬新な」初手端歩を退ける充実ぶり
posted2026/04/15 06:00
名人戦4連覇に向けて好発進を切った藤井聡太名人
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田丸昇Noboru Tamaru
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日本将棋連盟
第84期名人戦七番勝負は藤井聡太名人(竜王・王位・棋王・棋聖・王将を合わせて六冠=23)に糸谷哲郎八段(37)が初挑戦している。藤井が2023年からの名人戦4連覇なるか、糸谷が名人を初めて獲得するか、という大きな勝負だ。その第1局は4月8、9日に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われ、藤井名人が激闘を制して先勝した。
藤井は名人戦に先立つ王将戦七番勝負と棋王戦五番勝負で、カド番をそれぞれしのいで逆転防衛を果たした。糸谷は自在な将棋を指す個性派で、現在は棋士と将棋連盟常務理事の「二刀流」である。そんな両者の名人戦第1局の戦いぶりを、田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書と年齢はいずれも当時】
「将棋の内容が良くなく」不調説が囁かれたが
藤井六冠は「自分の将棋の幅を広げていくために、面白い将棋を追究したい」と、常々語っている。それは奇想天外な将棋を指すことではなく、どちらが勝つか不明の難解な局面で切り結びたい、との意味のようだ。深い読みに自信があるからにほかならない。
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将棋界の絶対王者である藤井が、2月から3月に並行して進められた2つのタイトル戦で負けが込んだ。
ALSOK杯第75期王将戦七番勝負第4局で、藤井王将は挑戦者の永瀬拓矢九段(33)に1勝3敗と大きく負け越した。また第51期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局で、藤井棋王は挑戦者の増田康宏八段(28)に1勝2敗と負け越した。タイトル保持者が同じ時期の2棋戦で、カド番に追い込まれた例は珍しい。
さすがの藤井も「将棋の内容が良くなく、均整の取れた局面にできない。精神的に良好とは言えない」と口にした。取り沙汰された不調説については、「課題が解決されてないことが、結果に出てしまった」という。それでも「目の前の一局に全力で集中し、少しでも番勝負を続けたい」と語って前を向いた。
逆境に強い藤井へ挑戦…37歳糸谷の返り咲き
そして、藤井は王将戦で1勝3敗から3連勝し、棋王戦も1勝2敗から2連勝し、いずれもカド番をしのいで逆転防衛を果たした。大山康晴十五世名人や中原誠十六世名人(78)が同様のケースでタイトルを死守したように、大棋士ほど逆境に強いことを実証してみせた。
藤井は王将戦第7局の終局後に「不思議な気持ち」と語ったが――目に見えない何かに背中を押された結果ともいえる。

