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藤井聡太は21歳で永世資格を獲得したが「大山康晴戦から12日後…山田道美、36歳の死」「羽生善治“七冠”が崩れた日」棋聖戦の死闘史 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2025/05/31 11:01

藤井聡太は21歳で永世資格を獲得したが「大山康晴戦から12日後…山田道美、36歳の死」「羽生善治“七冠”が崩れた日」棋聖戦の死闘史<Number Web> photograph by JIJI PRESS

「今後の目標はもちろん将棋に勝つことですが、人間として《飲む、打つ、買う》の壁を避けることはできません。それを乗り切って、なお社会人として通用しなければ、将棋界の第一人者になれないでしょう」

 インタビューでこう語った米長は、幅広い生き方を目指していた。将棋一筋に生きる好ライバルの中原名人を意識したものだった。その米長棋聖に内藤國雄八段(34)が挑戦したのは第23期。名解説で人気の芹沢博文八段(37)は両者の名前を引用して「《クニオ(国を)挙げての戦い》」と形容した。そのクニオ対決は、内藤が制した。

羽生の七冠独占が崩れた日

〈第44期:84年度前期〉
 米長棋聖に挑戦したのは、当時22歳の谷川浩司名人だった。谷川は83年に21歳2カ月の最年少記録(現在は2位)で名人を獲得したが、ほかのタイトルはなかった。一方の米長は三冠を保持していて、「泥沼流」と呼ばれた指し方を駆使していた。谷川に対しても意表を突く手で手玉に取り、3連勝で防衛した。

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〈第56期:90年度前期〉
 中原棋聖に18歳の屋敷伸之五段が挑戦した。前期に続いて再挑戦した屋敷は2連敗したものの、カド番をしのいで第5局に持ち込み、逆転勝ちで棋聖を獲得した。18歳6カ月でタイトル獲得は最年少記録(現在は2位)だった。変幻自在に指す屋敷の将棋は「忍者流」と呼ばれた。

〈第67期:96年度〉
 羽生棋聖(25)に三浦弘行五段(22)が前期に続いて再挑戦した。羽生は96年2月に前人未到の「七冠制覇」を達成し、あまりにも強いのでタイトル独占はずっと続くと思われた。

 棋聖戦も2勝1敗とリードしたが第4局で敗れた。同年7月の第5局では羽生に勝機があったが逃してしまい、三浦が勝って初タイトルの棋聖を獲得した。羽生の七冠制覇は167日で終わった。終局後に敗者への異例の記者会見が行われ、羽生は「いつかこういう日が来ると覚悟していましたが、現実となるとやはり辛いです」と語った。

 三浦は棋士との研究会に参加せず、パソコンを用いて独自に研究していた。そんな孤高の姿は「(宮本)武蔵」と呼ばれた。

永世称号を取得した佐藤康光、豊島は打倒羽生で…

〈第77期:2006年度〉
 佐藤康光棋聖(36)が5連覇を達成し、永世棋聖の称号を取得した。インタビューではこう語っている。

【次ページ】 「探求心を持って」から5連覇…永世資格を得た藤井

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