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《エミレーツFAカップトロフィーツアー》FAカップを知る稲本潤一と李忠成が語る「熱狂を生み出す最も歴史のあるサッカー大会の魅力」
posted2026/04/22 11:00
トークセッションに参加した左からオリビア・ブザグロ、稲本潤一、李忠成
text by

福田剛Tsuyoshi Fukuda
photograph by
Yuki Suenaga
1871年に創設された最も歴史のあるサッカー公式大会、エミレーツFAカップ(以下FAカップ)。150年以上にわたり、イングランドのみならず世界のサッカーファンを魅了し続けてきた。
イングランドサッカー協会(FA)は、優勝チームに贈られるオフィシャルトロフィーが日本を巡る「エミレーツFAカップ:東京テイクオーバー」を、東京、大阪、静岡で開催(3月27日から4月5日)。このツアーの一環として、3月31日に東京・MUFGスタジアム(国立競技場)で「エミレーツFAカップとJFA天皇杯 特別トークセッション」が行なわれた。
トークセッションのために設けられた舞台には、かつて選手としてイングランドでプレーし、FAカップにも出場した稲本潤一と李忠成、さらにFAカップに携わり、今回のFAカップトロフィーツアーの担当を務めるスポーツプレゼンター、オリビア・ブザグロが登壇した。
今回のツアーのアンバサダーも務める稲本は、アーセナル時代に優勝を経験。
「トロフィーが今、日本にあるっていうことが、すごく不思議な感じがします。アーセナルがプレミアリーグとFAカップの2冠を達成したとき(2001-2002シーズン)にトロフィーを掲げているんですけど、僕自身は試合にあまり出場できなかったので、何万人ものファンの前でトロフィーを掲げるのがちょっと恥ずかしかった記憶があります。これ以降、胸を張ってトロフィーを掲げられるくらい活躍したい、試合に出たいという気持ちが強くなったのを覚えています」
2012年にサンフレッチェ広島からサウサンプトンに移籍した李は、くしくもデビュー戦がFAカップだった。
「サウサンプトンはまだ(2部リーグの)チャンピオンシップのチームだったこともあり、トーナメントの3回戦、4回戦で負けていたので当時はトロフィーの影すらも見ることができませんでした。今日初めて本物を目にしましたけど、やっぱり大きいですね。重みを感じます」
イングランドのサッカーファンにとっては、「FAカップは特別な大会」とブザグロは語る。
「これほど長い歴史がありながら、今も、多くの選手、そしてファンに愛されている大会は世界的に見ても珍しいと思います。そして、どれだけ時代が進んでも、名誉あるトロフィーであり続けることは、イングランドのサッカーファンにとっては誇りでもあります。今回の『エミレーツFAカップ:東京テイクオーバー』を通して、日本の皆さんにもFAカップと日本サッカーとの関わりや、イングランドのサッカーファンが抱いている想いを知っていただきたいです」
3つのトロフィーがつなぐ、日英サッカーの絆
3人が登壇したステージ上に飾られたFAカップトロフィー。その横には天皇杯とFAシルバーカップが並べられている。今回、FAが「エミレーツFAカップ:東京テイクオーバー」を開催したのは、世界で最も歴史あるこのカップ戦の魅力を広めるためだけではない。この3つのトロフィーには、日本サッカーとイングランドサッカーの深いつながりの歴史が刻まれている。
1919年、まだサッカーを統括する協会が存在していなかった日本に、日英の友好とサッカー普及を目的にFAから「FAシルバーカップ」が寄贈された。これを契機に、1921年に大日本蹴球協会(現・日本サッカー協会)が設立。FAカップをモデルに全国規模の大会が開催され、その優勝チームにはFAシルバーカップが授与されるようになった。
FAシルバーカップは戦時下に消失するも、大会は全日本サッカー選手権として戦後も続けられ、第31回大会(1951年度)から大会名を「天皇杯」と改め、優勝チームに天皇杯が授与されることになった。日本サッカー協会90周年の2011年には消失したFAシルバーカップに代わる新たなカップが再びFAから贈られ、2011年大会からは天皇杯の優勝チームに、天皇杯と共に授与されている。
日本サッカーの歴史と深い関わりを持つ3つのトロフィーを前に、稲本は「100年以上前に、日本のサッカー普及に力を尽くしてくれたイングランドには、サッカー選手の一人としてすごく感謝しています。これまで歴史的な背景は知らなかったのですが、日本サッカーと関わりの深い3つのトロフィーが揃っているところに居合わせることができて、すごく幸せを感じています」と語る。
現在シンガポールでクラブチームのスポーツディレクターを務める李も、その歴史的つながりに感銘を受けたという。
「100年以上も前に、日本にサッカーを普及させるためにイングランドから海を渡ってFAシルバーカップが贈られたことを知って、驚きました。今の選手やサッカー選手になることを夢見てプレーしている子どもたちにも、その歴史を知り、誇りを感じながらサッカーをしてもらいたいと思います」
ジャイアントキリングこそがFAカップの真骨頂
150年以上もの長きにわたり、イングランドそして世界のサッカーファンを魅了するFAカップ。その魅力はどこにあるのだろうか。
チェルシーファンでもあるブザグロは、「ジャイアントキリングを目撃できるところ」と、イングランドのサッカーファンの想いを伝える。
「プレミアリーグは選ばれた20チームが38試合を戦います。それに対してFAカップは、プレミアリーグはもちろん地域のアマチュアクラブまであらゆるレベルのチームが参加し、ノックアウト方式で戦います。何が起こるかわからない一発勝負ならではの高揚感や落差、スリルがあり、それがこの大会を特別なものにしています」
実はブザグロの父であるティム・ブザグロも地域リーグのウォキングFCの選手として活躍していた。1991年に、FAカップ3回戦で当時2部のウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンを相手にハットトリックを決め、勝利。FAカップ史に残るジャイアントキリングを成し遂げたレジェンドとして、今も語り継がれているという。
「FAカップはたくさんの物語を生み出す大会でもあります。昨シーズンのFAカップ覇者クリスタルパレスは、今シーズン3回戦で6部リーグのマクルズフィールドに敗れました。6部のチームがプレミアリーグのチーム、それも前年の覇者を倒す。マクルズフィールドファンにとっては人生最高の日になりました。この気持ちを日本、そして世界のサッカーファンに届けたいですし、その感動や興奮を次世代の子どもたちにも感じてもらいたいです」(ブザグロ)
ピッチで戦う選手にとっても、「FAカップは特別な存在」と、李は言う。
「FAカップになると、サポーターがとても熱い。ミルウォール戦の初戦はアウェーでしたが、バスでスタジアムに入る時にもう子どもから大人まですごい熱量でブーイングされました。格上のチームを倒してやろうという熱狂が一番感じられるのがFAカップです。その熱さがプレーをしていても楽しかったですね。プロとかアマチュアとか関係無く、その町のみんなが自分たちのクラブを、選手を応援する。これぞイングランドサッカーだと感じました」
今回のツアーでは、世田谷区の子どもたち(小学生)を対象としたサッカークリニックも開催。稲本と李による実技指導の後、キッズサッカーゲーム「ミニFAカップ」のトーナメントも行なわれた。
稲本は、今サッカーをプレーしている子どもたちにこそ、諦めない気持ちをFAカップから学んでほしいという。
「最後まで諦めずに得点を狙い続ける姿勢がジャイアントキリングを生む元だと思います。どれだけレベルが高い相手であっても、諦めずに自分を信じてプレーする。それが自分の成長にきっとつながるはずです」
佳境を迎えたFAカップ。残すは4月25日と26日の準決勝2試合と、5月16日の決勝のみとなった。聖地ウェンブリー・スタジアムconnected by EEで、どんな物語が生まれるのか。期待は高まるばかりだ。
「エミレーツFAカップ」オフィシャルトロフィーツアー 東京・大阪・静岡を巡る、「エミレーツFAカップ:東京テイクオーバー」を開催

3月29日には日本最古のプロ野球球団「読売ジャイアンツ」とのコラボレーションにより、東京ドームにて1日限定の特別展示が実現。読売ジャイアンツで今季からキャプテンを務める岸田行倫もセレモニーに出席した。
3月30日は日本の国技・相撲と融合。ウクライナ出身でサッカーファンを公言する大関・安青錦とFAカップトロフィーツアー担当者との特別対談も実施。
4月2日には日本有数のサッカーの聖地で、サッカー王国と言われる静岡に「エミレーツFAカップ」のトロフィーが到着。サッカー神社として知られる小芝八幡宮で「エミレーツFAカップ」の成功祈願を行なった。
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エミレーツFAカップ 公式サイト:https://www.thefa.com
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