中日・井上一樹監督に密着「選手に怒られるかも…（笑）」星野仙一でも落合博満でもない…“カリスマじゃない男”は3年連続最下位ドラゴンズを再建できるか？ 

　なるほど、試合開始前も雰囲気は保たれている。「前向きに、ポジティブに」。井上が監督就任後から繰り返している言葉と実際の行動に乖離はないように思えた。

　試合開始5分前、井上とヤクルト監督、高津臣吾がメンバー表を交換する。2日ともお辞儀する頭の位置は井上が低い。歳も3つ上で監督6年目の高津と違い、井上は就任1年目。采配をとりはじめてまだ2カ月なのだ。

　試合がはじまる。ベンチの様子を観察する。

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　ベンチの右端から2番目が定位置だ。攻撃の回は立つ井上を、打撃統括コーチの松中信彦が前で、近くを打撃・作戦コーチの森野将彦、サインを出す野手総合コーチの飯山が囲む。守備の回は座る井上の前に、内野守備走塁コーチの堂上直倫とバッテリーコーチの大野奨太が立つ。

中日攻撃時のベンチ。井上監督は後方で立つ。打撃統括コーチの松中信彦が前で、近くを打撃・作戦コーチの森野将彦（後方右）、サインを出す野手総合コーチの飯山裕志（後方左）が囲む（写真は5月16日、東京ドームでの巨人戦）　©Miki Fukano

中日守備時のベンチ。井上監督は後方で座る。内野守備走塁コーチの堂上直倫（前方左）とバッテリーコーチの大野奨太（前方中央）が立つ。井上監督の右隣には投手コーチの山井大介　©Miki Fukano

井上監督がそわそわ…「2つのシーン」

　明らかにそわそわしている。そう思えるシーンが2つあった。

　1つ目は代打を申告した場面だ。13日の4回裏、先発・三浦瑞樹の打順で板山祐太郎を送る。直後、落ち着きがなくなり、表情を悟られまいと下を向く。どこか祈っているようにも見えた。13日のハイライトは代打・大島洋平のタイムリー安打、14日は代打・ブライト健太のタイムリースリーベース。狙いが当たって井上は口元が緩むのを隠しきれない。当然だ。興奮しているのだ。判断ひとつで流れが変わる。勝敗が分かれる。

　この2日間に限っていえば、井上の代打策はことごとく当たっていた。だからといって、ことさら称賛されることはない。143試合のうちのたかが1プレー。しかし継投失敗しようものなら猛烈に批判される。それが監督という仕事なのだろう。かつて星野仙一は監督時代、試合直後の血圧が210に上っていたという。その所以を痛感する。

　2つ目は先発投手が崩れかけた場面だ。

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