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プロ野球PRESSBACK NUMBER
中日・井上一樹監督に密着「選手に怒られるかも…(笑)」星野仙一でも落合博満でもない…“カリスマじゃない男”は3年連続最下位ドラゴンズを再建できるか?
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byKYODO
posted2025/05/25 11:01
今季から中日を指揮する井上一樹監督(53歳)。写真はプロ入りから21年連続勝利の涌井秀章(38歳)をねぎらう姿
13日の初回、先発・三浦が二塁打、四球でピンチを迎える。腕を組む井上。つづくバント処理が三塁悪送球になり1失点。ネガティブの引力がベンチを襲いそうになる。しかし井上は首をひねりはしたものの、落胆の色は見せない。三浦がなんとか3失点で粘る。辛うじて呑まれなかった。それが中盤の逆転につながり、大島のヒットも生んだ。
「あいつに怒られるかもしれない」
自分を下げてでも人懐っこくコミュニケーションを取る。緊迫したゲーム中もそうだった。キャラクターは演技ではないのだろうと思わせた。たとえば投手交代を告げるタイミングが遅れたとき、「ごめん……!」と片手で詫びるポーズをとりながら球審に近づく。ブライトのスリーベースの瞬間はファンと同じ熱量で興奮し、コーチ陣とハイタッチを交わした。その監督像は星野、落合、立浪といったカリスマたちのそれとは違った。あくまで脇役。選手時代から変わらない、井上の素の姿であることを感じさせた。
13日は試合終了9分後、14日は3分後に囲み取材の場に現れた。
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「落ち着きぶりには頭が下がります」(涌井秀章の好投について)
「今日バンテリンドームが一番盛り上がったのはブライト。もともと人気のある選手ですから」
「打率は2割ですけど打率以上のものというか。お値段以上じゃないけども…」
「スタメン僕ないんですか? ってあいつに怒られるかもしれない」(ブライト健太の活躍について)
「うちは本当に全員野球で。いまベンチもみんな『うるさい!』というぐらい騒いで元気あるので。必死になってつなぐ野球を続けていきたいです」(つづく巨人戦への意気込みを問われ)
中日の連勝でカードを終えた。翌日の中日スポーツ一面だ。
〈竜逆転!! 豊橋に歓喜届ける 代打大島2045安打〉14日
〈42年ぶり!! 4球団2桁勝利 これぞ涌井 淡々と金字塔〉15日
井上は主語に立たない。シーズンは長い。

