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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「正直に言うと、夢がないなと」春高3連覇の駿台学園をなぜ辞めた? 高校バレー名将が大阪ブルテオン“移籍”へ…決断の背景に“部活が抱える課題”も
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2025/03/08 11:02
2014年から駿台学園高を強豪校に育て上げてきた梅川大介監督。後継者に託し、新たな挑戦に舵を切った
新設されるU18はすでにベースがあるU15と異なり、選手を集め、形をつくるところから始まる。少子化の昨今、人材の確保は決して容易なことではないはずだが、“無”の状態で始めるからこそ面白いと梅川監督は語る。
「初心者も大歓迎。とにかく大きい子たちを集めてセッターもできるように育てる、とか。大型選手を抱えていても、勝つことを優先するあまり『まだ上手じゃない』と起用しないケースもある。それでは成長にはつながらない。できない選手を怒るのではなく、教えるのが指導者の仕事です」
「クラブと高校が共存して発展する」
まさに未来へとつながる新しいチャレンジだが、現実に目を向ければ課題も多い。
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学校スポーツとして発展してきた従来の形式をガラッと変えることを疑問視する声は根強く、SVリーグ間でも解釈に差があり、そもそもU18を傘下に置くことに対して肯定的なチームばかりでない。下部組織に選手が集まれば、春高バレーで上位進出を果たす強豪校へ進学する選手が減るのではないか。そもそもU18の選手たちは複数の高校から集まるのか、1つの高校に進学するのかなど今後に向けた課題も多く、中には「見送るべきではないか」と意見する関係者はいる。
だが、SVリーグはバレーボールの発展、地域や未来へ貢献するためにU18の創設を義務化した。梅川監督は「クラブと高校が共存して発展していけばいい」と、揺るがない。
「たとえば、近隣の高校で部活の練習が休みの日、試合に出る機会が少ない1、2年生だけが(U18の)練習に参加したっていいんです。技術や考え方を学んで、それぞれの学校で活かせればいいし、そこから『こういう場を設けてくれたブルテオンの試合を見に行こう』と集客にもつながるかもしれない。そうなればみんながハッピーですよね。もっとオープンに、みんなが仲良く、バレーボールの輪が広がっていけば一番だと私は思いますね」
クラブと高校、カテゴリーを分けるのではなく、育成年代で大切なのは“つなげる”こと。だからこそ、梅川監督自身、駿台学園の指導にも可能な限り携わるという。
「監督が教員でなければいけないルールはない。バレーの世界では少数の事例かもしれないですが、これからの指導者として新しい形になるはずです。常に指導してもらえるのは選手たちにとっても、部活の指導に時間が割かれることがマイナスになっている教員にとってもメリットしかない。ブルテオンと駿台学園が認めてくれれば私も外部コーチとしてベンチに入ることもできますし、『やったことがないからダメ』と言われるものをいろいろとチャレンジして変えていきたいです」
前例がなければつくればいい。梅川監督の挑戦が、バレーボール界に一石を投じる。
〈後編に続く〉
◇後編では、梅川監督のもとで指導を受けた川野琢磨のイタリア留学に迫ります。SVリーグ・東京グレートベアーズの強化育成選手であり、春から早稲田大学への進学を控える身長197cmのアタッカーは、なぜ限られた時間にもかかわらず海をわたる決断ができたのか。史上初の試みに密着しました。

