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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「熱量の高い指導者がゼロ」青学大・原晋監督の“実業団批判”に本音「ひとことくらいは言いたい」住友電工・渡辺康幸監督が語る“大学と実業団の違い”
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/02/06 11:21

大学、実業団それぞれの実情を知る渡辺康幸氏。青山学院大学・原晋監督の“実業団批判”に率直な思いを語った
原監督の人となり、指導論はよく知っている。一見、派手に見えても、チーム作りは質実剛健。アメとムチをうまく使い分け、組織をコントロールする術に長けている。「平成生まれの学生たちに昭和の考えを叩き込んでいる感じですかね」と笑う。自ら淡白と認める渡辺とは正反対で、良い意味で“しつこく言える”タイプ。選手との間に信頼関係があって初めて成り立っているという。その原監督に敬意を払っているからこそ、胸の奥にある思いを明かす。
「原さんが実業団に対して、言わんとしていることは8割、9割は理解できます。私も大学で監督を務めているときは、同じように思っていた節がありましたから。ただ、こちらもひとことくらいは言いたい。実業団の監督があぐらをかいているわけではないんです。熱量だってあります。実業団と大学の両方で監督をした経験のある立場から言わせてもらえば、どちらも大変です。これは胸を張って言えます」
「実業団も自分たちで考えていくべき時代」
もちろん、実業団のコンテンツが、大学駅伝ほど盛り上がっていない現実はしっかり受け止めている。選手の育成だけにとどまらない。陸上界の発展に寄与するために環境の改善にも目を向ける。渡辺自身、現状には満足していない。
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「今後は世間から注目されるレースをもっと創出していかないといけません。これからもずっと安泰ではありませんから。スポンサーがついて、テレビで中継される大会があるのも、当たり前ではないんだ、と認識しないと。実業団もすべて会社任せではなく、自分たちでも考えていくべき時代です。箱根駅伝で活躍した選手たちが、その後も輝ける場所をつくっていくことを真剣に思案していきたいです」
熱を帯びた言葉には、意欲がにじんでいた。2025年度以降は、実業団監督としての育成力もより問われる。住友電工には第101回箱根駅伝の大会MVPと最優秀選手賞の金栗四三杯に輝いた青山学院大の野村昭夢らが入社予定。渡辺は、指導者としての責任をひしひしと感じていた。
熱量はたっぷりある。山下りの6区で前人未踏の56分台の区間新記録をマークした逸材をどのように育てていくのか。原監督も厳しく目を凝らして、見ているはずだ。
<前編とあわせてお読みください>
