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「あの電話のことは忘れられません」広島カープ・新井貴浩監督が明かす“阪神時代の岡田彰布監督”「自分にとって岡田さんは特別な存在です」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byRyo Kawagoe

posted2024/12/16 17:00

「あの電話のことは忘れられません」広島カープ・新井貴浩監督が明かす“阪神時代の岡田彰布監督”「自分にとって岡田さんは特別な存在です」<Number Web> photograph by Ryo Kawagoe

2023年から広島カープの監督を務める新井貴浩が今季限りで退任した阪神・岡田彰布監督のことを語った

 甲子園球場は4万3000人の大観衆を飲み込んで膨れ上がっていた。プレーボールの1時間ほど前、新井は人知れず関係者口の門をくぐった。ユニホームに着替えてダグアウトに姿を現した。いないはずの男がいる。チームメイトですら驚いていた。岡田は新井にスイングさせてみることもなく、切り札として待機させた。そして4点をリードされた6回裏1アウト満塁の場面で代打・新井を告げた。その瞬間に見た光景と耳にした音を新井は今も鮮明に覚えているという。

「もう自分も鳥肌が立って…」

「自分がベンチから出て、ネクスト(バッターズ・サークル)に行った瞬間、甲子園がバーっと沸いたんです。打席にいた桧山(進次郎)さんが何事かとバッターボックスを外したぐらいの歓声で、もう自分も鳥肌が立ってアドレナリンが出ていた」

 1カ月もゲームから遠ざかり、バットすら振れなかった男がいきなり一軍の打席に立つ。それだけでも常識では考えられないことだったが、新井はその打席でタイムリーヒットを放った。ゲームには敗れたが、新井は監督の言葉が選手にどれほどの力を与えるのかを知った。そして同時に監督という職の責任も知った。最終的に、ライバル巨人に歴史的な逆転優勝を許した岡田はそのシーズン限りで辞任したのだ。

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「今から思えば岡田さんは首位にいながらも苦しかったと思うんです。それで何かを変えないといけないと思って自分に電話したのかもしれません。岡田さんに(阪神へ)呼んでもらって、何か貢献したいと思っていたんですけど、怪我をして離脱してしまったことにすごく責任を感じました」

 失意のシーズンを終えて数カ月の後、新井は岡田を食事に誘った。そこで頭を下げると「ええよ。そんなん」と笑っていたという。去りゆく背中をただ見送るしかない歯痒さが残った。

物語の再開は敵同士として

 だが、岡田と新井の物語はそれで終わりではなかった。新井が広島の監督に就任した2022年の秋、岡田もまた阪神の指揮官として再登板が決まったのだ。就任会見にタイガースを象徴する黄色のネクタイを締めて現れた岡田は言った。

〈新井が赤いネクタイしてたから。黄色にしていかなあかんかな思って〉

 かつて悲劇のシーズンを過ごした指揮官と主砲による第二章の幕開けである。

 岡田は、監督として若葉マークをつけた新井の前に立ちはだかった。

「やっぱりぶれないんです。野球を知っていて基本に忠実で、余計なことはしない。野球には目に見えない流れがあって余計なことをすると流れが変わってしまうことがあるんですが、岡田さんはそれを手放さないようにじっと我慢している。自分がタイガースの選手だったときにも岡田さんは当たり前のことを当たり前にやりなさいと言っていたんですが、そういうことだと思うんです。ただ、成熟期に入った阪神に比べて、うちはまだ今からの若い選手が結構いるので、あえて動きを出していかないといけない。リスクを覚悟でやらないといけないと感じてましたから(ヒット)エンドランを1試合に8回ぐらい出したこともありました。セオリーからしたらありえないんですけど、リスクを取ってガンガン攻めていかないといけなかった」

 新井がベンチの最前列に立つ。グラウンドを隔てて反対側のベンチではどっかりと座った岡田が腕を組んでいる。動と静のせめぎ合いはリーグを沸かせたが、中でも新井の記憶に残っているのが2023年のCSのファイナルステージだという。

【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内の「あの電話のことは忘れられません」カープ新井貴浩監督が語った“敵将”で“先輩”岡田彰布の「凄み」とは何か?【インタビュー】で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

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