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「給料安い選手に期待したらかわいそうでしょ」歴史的優勝のソフトバンク・小久保裕紀監督が現地記者に語った“独走ウラ側”「MVP候補の3人」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2024/09/25 11:03
独走でパ・リーグを制したソフトバンク。写真はビールかけを楽しむ小久保裕紀監督と山川穂高
今季の近藤は6月度に月間MVPを獲得したのだが、じつはこの時も怪我を負っていた。同月12日のヤクルト戦(みずほPayPayドーム)の左翼守備で右手中指と薬指の付け根付近を捻挫。その後しばらくボールを投げられない状態が続いた。当然、それ相応の痛みを抱えていたはずなのだが、主力としての責任感から指名打者で出場を続けた。試合後は患部に氷を当てながら帰宅する日々の中で、月間打率.413、7本塁打、23打点の成績を残してみせた。6月といえば、先述したように山川が大不振に陥っていた期間だ。「誰かが打たない時に他の選手がカバーすることができていた」(小久保監督)。チームも6月は17勝5敗1分と月別で最高勝率(.773)を残した。終わってみればこの6月の快進撃がペナント独走を決定づけるものになった。
先発“1年目”で圧巻…モイネロ
最後のMVP候補3人目はリバン・モイネロだ。キューバから来日して8年目の今季から先発に転向。昨年までは通算135ホールド、40セーブの名リリーバーとして活躍したとはいえ、先発としては全くの未知数だったものの開幕から先発ローテをほぼ守り抜いて球団の外国人左腕として初となる2桁勝利も挙げた。モイネロは「オフにキューバに居た間の準備と2月のキャンプの過ごし方が良かった。走るのは好きじゃないけど、走る量も増やした」と話していた。また、3月のオープン戦が始まったばかりの頃は“先発仕様”の投球スタイルを目指して、変化球を駆使しボールを低めに集めてゴロを打たせることを目指したが上手くいかなかった。1試合の失敗を経てすぐに「リリーフでやっていた頃のように、強いボールを投げてフライアウトをとる」と考え方を改めたことで投球が一気に安定した。
小久保監督もシーズン当初は「開幕ローテに入れたけど、どこかで上手く回復させながら」と登板間隔を空けるなど様子見をするつもりだったが、結果的にはほぼ年間を通してローテを守り抜いた。今季2度の月間MVP(6月度、8月度)に輝くなど右腕エースの有原航平と2本柱を形成。現時点で白星では有原の13に及ばない11勝となっているが、防御率1.94でパ・リーグ唯一の1点台を記録して1位に立っている。このままタイトル獲得となるだろうか。
2024年のシーズンMVPは11月26日に開催される「NPB AWARDS」の中で発表される。その前にまだ大仕事が残っている。リーグ制覇の次は、日本一の頂を目指す。まず乗り越えなくてはならないクライマックスシリーズのファイナルステージは10月16日から始まる。美しく、どこよりも高く飛翔した鷹。レギュラーシーズン後半は苦しみも味わったが、ここからもう1つ上昇気流をつかんで羽ばたくつもりだ。