野球のぼせもんBACK NUMBER
「給料安い選手に期待したらかわいそうでしょ」歴史的優勝のソフトバンク・小久保裕紀監督が現地記者に語った“独走ウラ側”「MVP候補の3人」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2024/09/25 11:03
独走でパ・リーグを制したソフトバンク。写真はビールかけを楽しむ小久保裕紀監督と山川穂高
「アイツ(山川)は野球談義が大好き。酒のつまみがバッティング談義。栗原(陵矢)の奥さんもそばにいたのに、ずっと野球の話で申し訳なかったよ(笑)」
山川によれば、その席で初めて打撃技術のアドバイスを授かったという。また、4番で固定することも告げられた。腹が決まった山川のオールスター後の活躍は凄まじかった。前半戦は87試合で打率.219、14本塁打だったのが、後半戦は優勝決定試合までに48試合で打率.310、18本塁打と成績を大きく伸ばしてみせたのだった。
山川の後ろに近藤…その意図
そして、今季の5番打者である。そこは、近藤健介の指定席だった。
しかし優勝目前だった9月16日のオリックス戦で二盗を決めた際に右足首を捻挫して登録抹消となり、リーグ制覇の瞬間は松葉づえをつきながら歓喜の輪に加わるという痛々しい姿も見られた。それでも活躍が色褪せるはずがない。離脱前までは全試合に5番で出場してパ・リーグ唯一の打率3割台を記録するなど圧倒的な打撃でチームをけん引。打率.314、19本塁打、72打点の成績を残している。
5番、近藤。
それはもともと小久保監督の頭にはなかったプランだった。発案者は村上隆行一軍打撃コーチだ。4番に山川を据えることを最初に決め、その山川との勝負を避けられないために「最強バッター」をすぐ後ろに起用するのが最善の策と考えて提案をした。
「打たせるなら2番かなと考えていたけど、オープン戦で何パターンか試す中でこれはいいなと思うようになった。柳田(悠岐)は3番に置いてたしね。柳田も相手からすればもちろん嫌らしいバッターだけど、柳田が来た後には『うわ、今度は山川か』。そして最後に一番打ち取りにくいバッターがいる。バッテリーにすれば、しのいだとしても最後に近藤残ってる方が、柳田よりもボディーブローのように効いてツライやろうなというのを感じた」
小久保監督の中ではその3人の並びを変えずに2番・柳田、3番・山川、4番・近藤の案もあったそうだが、「順番は変えたくなかった。今年は(今宮)健太がものすごく機能してたからクリーンナップで落ち着いた」とファンの間でも議論になった5番・近藤をはじめとした2024年型打線の舞台裏を明かした。