バレーボールPRESSBACK NUMBER
「今までで一番いい試合だった」リベロ山本智大の涙腺を崩壊させたブラン監督と小川智大の言葉…“3番手”から這い上がった守護神の足跡
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/09/12 11:03
パリ五輪準々決勝イタリア戦で敗れ、ブラン監督(左)と涙を流す山本智大
山本にとって一番会心のプレーは、準々決勝第2セット23-23の場面。イタリアのスパイクにブロックを弾かれ、コートの外に飛んでいくボールを、山本が身を投げ出しながら左手1本で拾った。そこから石川祐希(ペルージャ)が決めて24-23と逆転。
スパイクを決めた石川はすぐに振り返って山本を探した。全員が「お前の得点だ」と言わんばかりに、人差し指を掲げて走り回る山本を追いかけた。
「あれが一番記憶に残っています。拮抗していて、1点出たいという場面だった。あそこからあのセットを取れたので、大きかったかなと。
自分の範囲に打たれたボールを上げるのは、なんかもう、当たり前じゃないですけど、僕の仕事、役割だと思っている。それだけじゃなく、今回は自分の範囲外に飛んだボールを結構引っ掛けることができていたので、それはよかったですね」
ブロックを抜けてきたボールを拾うのはもはや“当たり前”だというのが凄まじい。
「アメリカ戦でも(マシュー・)アンダーソンのスパイクを感覚よく拾えてたんですけど、当たり前みたいになって、みんなあんまりワーッとなってくんない。ちょっと寂しかったですね(笑)」
観客を“守備”で魅了「気持ちいい」
チームメイトにとって当たり前でも、観客は驚き、熱狂した。特にイタリア戦は山本の得点だと言ってもいいような場面が他に何度も生まれ、観客は山本の虜になった。守備の魅力、ラリーの魅力に取り憑かれたかのように、日本のディグが上がるたび会場のボルテージが高まり、自然とニッポンコール、ジャポンコールが巻き起こった。
そんな会場の空気に山本も心地よさを感じていた。
「気持ちいいなーって感じていました。シンプルにいいプレーに対して称賛してくれたので嬉しかったですね」