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「なんか祐希の様子おかしくない?」リベロ山本智大が察した石川祐希の異変…勝利目前だったイタリア戦の分岐点「もし戻れるなら…あそこですね」
posted2024/09/12 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Reuters/AFLO
もしも戻れるなら……。
パリから帰国して約3週間が経った8月末、インタビューに応じてくれた山本智大(大阪ブルテオン)が挙げたのは、準々決勝イタリア戦のあの場面だった。
「僕と石川の間に落ちたやつです。追いつかれた時っすね」
淡々とした口調に、悔しさがにじむ。
「どっちも行けるボールだった」
日本は第3セット24-21とマッチポイントを握り、準決勝進出まであと1点と迫った。そこからイタリアがサイドアウトを取り24-22。そこで、イタリア代表のキャプテン、シモーネ・ジャネッリが放ったサーブは山本と石川祐希(ペルージャ)の間へ。山本が懸命に食らいついてコート内に上げ、高橋藍(サントリーサンバーズ大阪)がつなぐが、3枚ブロックの指先を狙った石川のスパイクはわずかにそれてアウトとなり、24-23。
山本が挙げたのはこの次の場面だ。ジャネッリのサーブは再び2人の間を襲い、ノータッチでコートに刺さった。24-24とデュースに持ち込まれ、その後逆転された。
山本は回想する。
「僕と石川、どっちも行けるボールだったんですけど、彼が半歩ぐらい出ていたのが見えたので、(取りに)来るかなと思ってよけてしまった。でも最後にちょっとこっちに曲がってきて、という感じのボールでした。あれを、Aパスじゃなくても、上にあげることができていたら、状況は変わったのかなと。たらればですけど。戻るとしたらあそこですね。
その1本前も僕が片手でギリギリ上げた。2回同じところに来るとは思わなかったです。やっぱり彼(ジャネッリ)は持っていますね」
ただ勝敗の分岐点は他にいくつもあった。
「取るべきポイントは他にもありました。4セット目も5セット目も勝てるタイミングはありましたね。言ったらキリがないぐらいたくさん出てくるので、負けは負けかなと思います」
チャンスがおおいにあったからこそ、改めて悔しさが込み上げる。