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「今までで一番いい試合だった」リベロ山本智大の涙腺を崩壊させたブラン監督と小川智大の言葉…“3番手”から這い上がった守護神の足跡
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/09/12 11:03
パリ五輪準々決勝イタリア戦で敗れ、ブラン監督(左)と涙を流す山本智大
五輪メンバーからは落選したが、パリに同行し、試合後もスタンドから仲間達を見守っていた小川とエバデダン・ラリー(大阪ブルテオン)は、選手たちに手招きされて集合写真に加わった。
シューズを脱いでコートに入った小川がトコトコと駆け寄り、山本に抱きつくと、また涙を堪えきれなくなった。
「小川に『めっちゃよかったっすよー』と言われて、ハグした時に、彼の想いだったり、メンバー発表の時のことを思い出して、いろんな感情が込み上げてきて……。僕ももちろん悔しいですけど、たぶん僕以上に悔しい想いをして、それでもパリまでついてきてくれたので、いろんなありがとうという気持ちがありました。
彼がいたから毎日切磋琢磨して築き上げてこられた。パリでは宿舎が違ったので、試合前日の練習ぐらいしか会えなかったんですけど、リベロ同士でしか話せないことを話せた。リベロじゃないとわからない心境があるので、それに共感してくれる小川がいてくれて、ホッとしたりスッキリしたりしたので、本当にありがたかったです」
自分らしさを出せたパリ五輪
帰国後は、北海道の実家でオフを過ごした。北海道のヒーローはテレビ出演やイベントに引っ張りだこでなかなかゆっくりはできなかったが、久しぶりに両親との時間を満喫できたという。
「普段は家族で過ごす時間が少ないので、一緒に買い物をしたり、ドライブをしたり。両親がパリまで来てくれていたので、まずは『来てくれてありがとう』という気持ちを伝えて、いろんな話をしました。僕も非常に(パリは)楽しかったんですけど、両親もそれ以上に楽しんでくれていたみたいです」
壮絶な敗戦のあとだけに、山本から「楽しかった」という言葉を聞けて少しホッとした。
「オリンピックは吹っ切れてできたので。負けてしまったんですけど、僕個人としては今シーズンの中で一番よかったかなと思っています」
ネーションズリーグではポジション争いのプレッシャーに苦しんだが、その分五輪では「やっと力が抜けたというか、いい意味で自分らしさというのを出せたかな」と振り返る。