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大社の選手がリアル証言「いま自分は…限界を突破している」泣きじゃくる父も大社OBだった「甲子園中に母から送られてきた“動画”」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/20 17:02
大社高校を率いる石飛文太監督(42歳)。選手が証言する「限界を突破した」感覚とは
「地元の選手たちでやるって、本当に大事で。島根にも県外出身者が多い強豪があるんですけど、僕らはそこにも負けるはずがないと思っていました。小学校から高校まで関わってきた人たち、みんなが応援してくれていたので」
「大社で甲子園」泣きじゃくる父の動画
大社で甲子園に出場することは親子2代の夢でもあった。園山の家と大社は自転車で通えるほどの距離だ。
「僕の父さんも大社の野球部OBなんです。自分たちのような悔しさを味わってほしくないって、小学生の頃からいろいろ協力してくれました。甲子園でも試合ごと、LINEで相手投手の攻略法とかをアドバイスしてくれて。父さんがいなかったら、今の僕はいないと思ってます」
勝つたびに母が父・真哉さんの動画を送ってくれたという。そこにはスタンドで泣きじゃくる姿、宿で美酒に酔い潰れる姿が映っていた。
島根県大会の出場校数はわずかに38校だ。準々決勝は神村学園に2−8で完敗したものの、過疎化が深刻なエリアの公立校のベスト8は掛け値なしの快挙といっていいだろう。園山の夢も定まった。
「地元で体育の先生になって、島根を盛り上げたい。この経験を生かして、いつか島根からベスト8以上のチームを出すのが僕の夢です」
敗戦後、園山の黒いスパイク袋は甲子園の土でパンパンになっていた。
「父さんと山分けします」
園山の指先は真っ黒になっていた。感謝の思いのぶんだけ土をかき集めた。