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大社の選手がリアル証言「いま自分は…限界を突破している」泣きじゃくる父も大社OBだった「甲子園中に母から送られてきた“動画”」
posted2024/08/20 17:02
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
ブルドッグ——。そう呼ばれるバントシフトがある。
早稲田実との3回戦、大社は9回裏に2−2の同点に追いつき、延長タイブレークに持ち込んだ。その最初の守備、10回表のことだった。
証言「なんで自分はこんなにできてるんだ…」
早実の先頭打者を迎え、大社の内野陣は100パーセント、送りバントでくると読んだ。サードの園山純正(そのやま・じゅんせい)は投球と同時に勢いよく前進し、三塁側に転がってきたバントの打球を処理。素早い送球で三塁進塁を阻止すると、地面に突き刺すようなガッツポーズを見せた。
「ブルドッグを仕掛けるのは選手たちの判断。ノックの最後に何度もやってきた練習なので、超積極的思考で、絶対できると思ってやりました。あの試合は限界を突破したというか、甲子園にきてから、なんで自分はこんなにできてるんだろうという感覚があった」
大社は10回表、11回表と2イニング続けて早実の攻撃を0点でしのぎ、11回裏にサヨナラ勝ちを収めた。
彼らを突き動かしていたのはアルプススタンドを埋め尽くす「紫の大応援団」だった。
限界を突破している…実際の感覚
園山の体に未知の力が宿ったのは1回戦の報徳学園戦だったという。報徳学園といえば、甲子園のお膝元の強豪校だ。大応援でも知られる。
「報徳の『アゲアゲホイホイ』(応援歌)がすごいって聞いていたんですけど、ぜんぜんすごくなかった。うちの応援の方がすごかったので。あの試合で、どこが相手でも怖くなくなりました」
2回戦の創成館戦は先行されながらも2度追いつき、最後は延長タイブレークにもつれたものの5−4で逃げ切った。8番打者の園山はしびれる場面で2度のスクイズを含む3犠打を決めるなど、勝負所でことごとく自分の仕事をした。
「緊張した場面でよく決められたね、って言われたんですけど、ぜんぜんそんなことはなかったんです。応援があると打席の中でもリズムに乗れるし、緊張がほどけるんです」
大社の躍進の秘密を尋ねると、園山は確信に満ちた表情でこう言った。