核心にシュートを!BACK NUMBER
河村勇輝でも八村塁でもなく…フランス戦“数字で見る”最大の功労者は?「クラブでは控え」だった26歳・吉井裕鷹は代表の救世主になれるか
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKaoru Watabe/JMPA
posted2024/08/02 17:03
タイトなディフェンスで五輪でもチームに貢献している吉井裕鷹。随所に活躍が光るが前所属のアルバルクでは「控え選手」だった
吉井のプレースタイルといえば、NBAでプレーする選手に対してもひるまず身体をぶつけにいけるだけの守備力だ。
ただ、それを可能にしているのは196cm、94kgというフィジカルよりも、むしろそのメンタリティに因るところが大きいという。吉井本人はこう語る。
「プロの世界では技術うんぬんよりも心がずば抜けて大事だと僕は思っているので」
一方で、吉井は今回のパリ五輪に向けては、かなり厳しいシーズンを過ごしていた。先に挙げた様に、直近の2023-24シーズン、前のシーズンから平均プレータイムが約5分、先発試合数は20試合も激減した。
その理由は昨シーズンのアルバルク東京に、ブラジル代表で中核を担うレオナルド・メインデルが加入したことと関係している。メインデルは優れた3Pシューターで、昨シーズンのチームの得点源だった。彼を中心にしたチームが作られた以上、同じスモールフォワードのポジションを務め、守備を売りにしている吉井がチャンスを得られないのは構造的にも致し方なかった。
それでも吉井はめげることなく自身の出番が激減している状況について、毅然とこう話していた。
「選手として、試合に出る、出ないで、心を揺さぶられると結構しんどくなるので。試合に出たときに全力を出せるために、どうしたら良いかというのを常に考え続けるようにしています。誰かに感化されないと(モチベーションを)維持できないというのが一番良くないので。セルフで維持し続けることを意識しています」
「プロの世界では、心がずば抜けて大事」
その言葉に嘘がなかったことは、五輪本番で証明した。直前のシーズンで1試合平均10分強しかプレーしていなかった選手が、五輪本番で30分を超える時間コートにたっても、走り続けられた。
自らを「雑草」だと表現し、本田のような求道者に憧れる。そんな吉井にとって、所属したチームでライバルだったメインデルを擁するブラジル代表との決勝トーナメント進出をかけた大一番は、ヨダレが出るほど燃える舞台だろう。
「プロの世界では、心がずば抜けて大事」
そう考える吉井のハードワークが、これまで以上にチームに大きなものをもたらしたとしても、決して不思議ではない。